2017.09.12火曜日

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コラムcolumn

福山雅治との2度目のタッグが実現!映画監督・是枝裕和はなぜ、国内外で注目されるのか⁉

2013年公開の「そして父になる」でカンヌ国際映画祭審査員賞を受賞するなど、国内外から注目される是枝裕和。福山雅治を再び主演に迎えた最新作「三度目の殺人」がこれまでと趣の異なる作品ということで、是枝作品の魅力を改めて見つめてみましょう!

三度目の殺人
「三度目の殺人」
9月9日(土)全国公開 配給:東宝、ギャガ
© 2017フジテレビジョン アミューズ ギャガ

福山雅治と是枝作品初参加の役所広司が対峙

"約10分間のスタンディングオベーション"や"福山男泣き"といった見出しで、日本でもカンヌ受賞が華々しく取り上げられた映画、「そして父になる」。是枝裕和(これえだ・ひろかず)監督の作品といえば? と問われたら、最初にこの作品を挙げる人は多いですよね。

赤ちゃんの取り違え事件をモチーフにした「そして父になる」。親子とは、一緒に過ごした“時間”か、それとも“血のつながり”かを問いかける、感動作です。いい仕事、いい暮らしに恵まれたエリートサラリーマンで、家や息子のことはいつも妻まかせだった主人公・良多を演じているのが福山雅治。当時、独身の代表格のような存在だった福山が、初めて挑んだ父親役なんです。エリート特有の"いやらしさ"と、事件発覚によって徐々に父親としての意識が変わっていくさまを、巧みに演じているのが印象的でした。

そして父になる
そして父になる
©2013「そして父になる」製作委員会

その「そして父になる」以来、福山雅治×是枝監督の2度目のタッグが実現したのが、最新作の「三度目の殺人」です。是枝監督にとって初挑戦となる“法廷サスペンス”の本作で福山が演じるのは、裁判に勝つことが重要で真実は二の次と割り切る弁護士。彼が弁護を担当する、死刑がほぼ確実と思われる殺人事件の容疑者を、是枝組初参加となる役所広司が演じています。「そして父になる」にも通ずるクールで自信に満ちた男が、役所演じる不気味な容疑者の存在によって少しずつ崩れていく様は、見ごたえ十分!

是枝監督作品をもっと楽しむために、これまではどんな作品を撮っているのか、改めて振り返ってみましょう!

自分の人生と地続きに思えるホームドラマ

「そして父になる」もその一つに数えられますが、これまでの是枝作品で多く描かれてきたのが“家族”です。

例えば、綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、そして当時まだ無名に近かった広瀬すずが“四姉妹”を演じた「海街diary」(2015年公開)。吉田秋生の人気漫画を原作に、鎌倉の古い家に暮らす三姉妹が腹違いの妹を迎え入れ、少しずつ絆を育んでいく姿を描いた作品です。趣のある古い民家で、一緒に料理を作り、食卓を囲み、庭で採れた梅の実で梅酒を作る姉妹。四季の移ろいと共に丁寧につづられる何気ないはずの日常風景は、4人の華やかさも相まって、ずっと見ていたくなる美しさを放っています。

海街diary
海街diary
©2015 吉田秋生・小学館/フジテレビジョン 小学館 東宝 ギャガ

また、是枝監督自身がかつて住んでいたという東京・清瀬の団地で撮影された「海よりもまだ深く」(2016年公開)もまさに家族の話です。叶わぬ夢を追い続けるダメ中年・良多(阿部寛)と、良多を優しく見守る母・淑子(樹木希林)、良多の元妻・響子(真木よう子)、そして息子の真悟(吉澤太陽)。普段は離れて暮らしている4人が、たまたま集まった台風の一夜の出来事を中心に、夢見た“未来”と違う“今”を生きる大人たちの姿を、優しい視線で映しています。撮影地が監督に縁のある場所なだけに、監督が小さい頃に通っていた老舗ケーキ店が劇中に登場するなど、監督自身の実体験も少なからず反映されているという点でも注目です。

海よりもまだ深く
海よりもまだ深く
©2016 フジテレビジョン バンダイビジュアル AOI Pro. ギャガ

そのほか、「海よりもまだ深く」と同じく阿部寛と樹木希林が母と息子を演じた「歩いても 歩いても」(2008年)や、後述する「奇跡」(2011年公開)、「誰も知らない」(2004年公開)といった作品も、モチーフは違えども描かれているのは“ある家族”の姿です。

それら是枝監督が手掛ける“ホームドラマ”は、とても現実的。登場人物たちはそれぞれ問題を抱えているし、厄介な出来事も起こりはするけれど、日常では考えられないような、映画を面白くするための都合のよい展開は起きません。自分が置かれている(主に納得のいかない)状況を、家族との何気ないやり取りを通して、徐々に受け入れていく……そんな具合でしょうか。

だから、ワクワクするような高揚感はないかもしれませんが、反面「現実ってこうだよなぁ」としみじみと感じることができるんです。そして見終わったあと、自分の人生を見つめ直し、ささやかな幸せに気付くきっかけになることも。それって実は相当すごい映画体験ではないでしょうか。

だからこそ、映画の中のセリフにハッとさせられることもしばしば。例えば「海よりもまだ深く」で樹木希林演じる母のセリフ。「幸せってのはね、何かをあきらめないと手にできないもんなのよ」「私がだんだん弱っていくのをちゃんとそばで見てなさいよ」…いろいろと考えさせられるものです。

歩いても 歩いても
歩いても 歩いても
©2008「歩いても 歩いても」製作委員会

柳楽優弥や橋本環奈など、是枝監督は子役の魅力を引き出す天才

是枝監督は自身の著書『映画を撮りながら考えたこと』の中で、「僕にとっては役者さんたちとコミュニケーションをとっていくなかで脚本の内容がふくらむというのはとても豊かであり、いちばん楽しいことです」と語っています。実際、役者からのアイデアや控室での役者同士の掛け合いなども、脚本にそのまま採用したりもしているそうです。

1995年公開の「幻の光」で映画監督デビューをしますが、もともとはテレビディレクターとしてドキュメンタリー番組などを手掛けていた是枝監督。撮られる人との関係性が撮る内容にも影響を与えるドキュメンタリーを経験しているからこその、姿勢なのでしょう。確かに是枝作品の中のキャラクターたちは、「今ここに生きている」と思える自然さがあります。

撮る対象の話で言うと、是枝監督作品についてよく言われるのは、子役がとにかく魅力的であるということ。それは「誰も知らない」(2004年公開)で、柳楽優弥(当時14歳)にカンヌ国際映画祭最優秀男優賞をもたらしたことからも明らかです。

誰も知らない
誰も知らない
©「誰も知らない」製作委員会

柳楽優弥と共に、是枝監督の名も広く知られるきっかけとなった「誰も知らない」は、1988年に起きた実際の事件にインスパイアされて制作されました。唯一の保護者である母親に置き去りにされ、懸命に生きていく4人の子供たちの姿を、すぐそばで寄り添うようにカメラは映しています。

当時小学生だったお笑いコンビ・まえだまえだの前田航基、旺志郎が主人公の「奇跡」は、実の兄弟ということもあり、2人とも日常としか思えないナチュラルさ。特にお兄ちゃんが時折見せる無言の表情は、もはや大人顔負けの味わいがあります。そして今やスーパーアイドル・人気女優となった橋本環奈(当時12歳)も弟の友達役で出演していて、圧倒的な美少女ぶりと味のあるハスキーボイスで存在感を放っています。

「そして父になる」では、取り違えられた2人の子供が、2組の両親に見せる態度や表情の違いに驚かされ、「海街diary」では広瀬すず(当時17歳。子役ではないですが…)の澄んだ瞳や瑞々しい演技に、見とれてしまいます。

そもそも見出す目が優れているのでしょうが、子役をここまで生き生きと演じさせているのは、独特の演出方法に理由があります。それが、脚本を渡さず口頭でセリフや演技を伝える“口伝え”という方法。本来は脚本を読み、セリフを覚えてから撮影に臨むのが当然ですが、子役たちには事前に準備をさせず、ほぼぶっつけで撮影。その方法によって、相手役のセリフや行動に演技ではなく本当に驚いたりといった、子供たちの瞬間瞬間の自然な反応を引き出しているのです。

まとめ

ストーリーを知っていても、ふとした時にまた見返したくなる、そんな魅力にあふれた是枝監督作品。見ていない作品はもちろん、すでに見た作品も、改めて見返せば自分にとっての“人生の一作”が見つかるかもしれません。ちなみに、先にも紹介した是枝監督の著書『映画を撮りながら考えたこと』では、作品の解説や裏側などが書かれていて、作品を見た後に読むと新たな発見があって楽しいですよ!

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