2017.11.27月曜日

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コラムcolumn

今もっとも「重要」な俳優・菅田将暉。圧倒的な“目力”と、狂気もリアルな“存在感”に迫る!

2016年にはドラマにもなった芸人・又吉直樹の芥川賞受賞作「火花」が映画化(11月23日公開)。本作で桐谷健太とダブル主演を務めているのが、俳優としてはもちろん、歌手やラジオのパーソナリティとしても活躍する菅田将暉(すだ・まさき)。大阪出身、お笑い好きとしても知られる菅田が、映画の中でお笑いの世界へ飛び込みます!

「ザ・サークル」
「火花」
11月23日全国東宝系にてロードショー 配給:東宝
©2017「火花」製作委員会

菅田将暉が見せる迫真の漫才が圧巻! 笑いへの妥協なき青春映画「火花」

映画「火花」で菅田が演じているのは、売れない若手お笑いコンビ“スパークス”のボケ担当・徳永。そんな徳永が営業先の熱海で出会い、芸風と人間味にひかれて弟子入りを志願するのが、先輩コンビ“あほんだら”のボケ担当・神谷(桐谷健太)。現実や才能と葛藤しながら夢に向かって全力で歩み続ける2人の、10年間を追った青春ストーリーです。

メガホンを取ったのは、又吉の大先輩であり、監督としても評価されている芸人・板尾創路。板尾監督のこだわりによって、徳永と神谷、それぞれのツッコミ役には、2丁拳銃の川谷修士と元芸人の演技派俳優・三浦誠己という経験者がキャスティングされ、映画とはいえ、笑いへの妥協のなさを感じさせます。

そんな最高の布陣の中へ飛び込む俳優・菅田将暉。 撮影に臨むにあたって「お笑いがなかったら、今の僕は存在していないと思います」とコメントするほど、お笑い好きであることは有名。大好きだというダウンタウンとテレビで初共演した際、思いのたけを綴った手紙を号泣しながら読んでいた映像は、筆者ももらい泣きさせられました。そんな彼だけに、その芝居には芸人へのリスペクトを感じさせる熱量がこもっています。マイクスタンドを前にして相方と並んで立つ姿は、まさに芸人のそれ。特に、終盤に披露されるスパークスの漫才は、菅田と川谷の迫真の掛け合いによって、本物の漫才コンビの重要な局面を目の当たりにしているようで、鳥肌!

そんな熱演もあって、夢を追うことの危うさ、芸人の悲哀をこれでもかと感じ、どこか切ない気持ちになります。もちろん芸人の話なので、随所に笑えて、前向きな気持ちにもなるんですけどね。

そして本作のラストを彩る主題歌は、ビートたけしの名曲「浅草キッド」を、アーティストとしても活動している菅田と桐谷がカバー。貧しくも夢を追いかけた芸人を歌った歌が、最後まで物語の余韻にたっぷり浸らせてくれます。

俳優、そしてアーティストとしての、菅田将暉の転機となった作品とは?

2016年は「ピンクとグレー」、「デスノート Light up the NEW world」など9本、2017年は声優に初挑戦したアニメ「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」、「火花」を含めて6作の映画が公開。「おんな城主 直虎」(2017年)でNHK大河ドラマに初出演を果たし、舞台「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」(2017年)に出演するなど、様々なシーンで今最も求められる若手俳優・菅田将暉。

そんな俳優・菅田将暉の始まりは、平成仮面ライダーシリーズの11作目「仮面ライダーW」(2009~2010年)。16歳の最年少ライダーとしてデビューを飾りました。 桐山漣とのW主演で、左翔太郎(桐山漣)とフィリップ(菅田将暉)が、“2人で1人”の仮面ライダーとして活躍する、これまでにないスタイルが話題を呼んだ作品です。 「変身!」と言うとフィリップの魂が翔太郎に入ってしまうので、変身している間は気絶している、というのもかなり斬新です。

その後も数々のテレビや映画に出演しますが、彼自身が「転機になった作品」と話すのが、主演映画「共喰い」(2013年)です。 芥川賞を受賞した田中慎弥の同名小説を映画化した作品で、舞台は昭和最後の夏の山口県下関市。菅田は、暴力的な性癖を持つ父を嫌悪しつつも、自分に流れる同じ血や性について悩む17歳の高校生を演じ、日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞しました。リアルで生々しい性描写に挑んだ菅田の全身から、若者のギラギラとした欲望や焦燥感が伝わってきます。

綾野剛、池脇千鶴と共演した「そこのみにて光輝く」(2014年)では、高崎映画祭最優秀助演男優賞、日本映画批評家大賞助演男優賞など国内の映画賞を多数受賞。 函館の夏を舞台に、底辺に生きる家族の中で、前科者でありながら人なつっこく無垢さを失わない青年を、生き生きと楽しそうに演じている姿は印象的です。粗暴でどこか危なっかしいけれど憎めない、見事な舎弟キャラ!

「共喰い」と同様に「大きな転機になった作品」と語りながらも、まったくタイプの異なるのがこのドラマ、「民王」(2015年)です。 内閣総理大臣の父・武藤泰山(遠藤憲一)と大学生の息子・翔(菅田将暉)の、心と体が入れ替わってしまう、ファンタジックでハートフルなコメディーで、菅田は「作品のテイスト的にも今までに僕がやってきていなかったようなもの」と表現。豪快で偉そうな泰山と女子力高いおバカな翔を、一瞬で演じ分ける芝居はとにかく楽しい。「くだらないなぁ」と思いつつニヤニヤしちゃうんです。

そして今年2017年は、菅田将暉のアーティスト活動がスタート。始まりは、Greeeenの名曲誕生にまつわるドラマを松坂桃李とのW主演で映画化した「キセキ -あの日のソビト-」(2017年)。劇中のキャラクター、ヒデ(菅田将暉)、ナビ(横浜流星)、クニ(成田凌)、ソウ(杉野遥亮)で結成したグループ“グリーンボーイズ”が1月にCDデビューし、菅田将暉は6月にソロでデビュー。芝居同様、力強くまっすぐな歌声は、聴いているこちらに訴えかける力を感じます。そしてそれは人気アーティストをも引き付け、熱烈オファーによって米津玄師との豪華なタッグ(「灰色と青(+菅田将暉)」も実現。この曲がまた、菅田の自然体な歌声と合っていて、聴いていて心地いいんです。そしてクセになる!

そこのみにて光輝く
そこのみにて光輝く
©2014「そこのみにて光輝く」製作委員会
民王
民王 全8話
© 池井戸潤「民王」/テレビ朝日

狂気も女装もリアルに体現! さまざまな役を柔軟に演じ分ける菅田将暉

新たな作品が公開されるたび新たな菅田将暉に会える、そう断言できるほど、多彩な役柄を自由に柔軟に演じ分けるところが、俳優としての彼の大きな魅力です。

例えば、先述した「共喰い」のようなダークな作品では、欲望や闇、狂気といった人間の根底にある負の感情を、圧倒的な目力とまとう雰囲気で体現します。言葉を発せずとも、その豹変ぶりにゾクッとさせられてしまうのです。

今年公開された「帝一の國」や「銀魂」もヒットを記録しましたが、奇想天外な漫画原作の実写化も、彼が演じるとリアルに見えるという不思議。それは肉体的にキャラクターに寄せていく努力を惜しまないこともそうですが、「おんな城主 直虎」で怒った演技が”般若顔”と話題になったように、「人間の顔はここまで伸びやかに動くの!?」と思うほど表情が豊かなんです。

漫画の実写化作品の一つが「海月姫」(2014年)。 のん(能年玲奈)演じるクラゲオタクの主人公・月海やオタク女子たちを、奮い立たせ、助け支えていく男子・蔵之介を菅田は演じていますが、蔵之介の趣味が女装。しかも漫画では“美女”という設定なのでどの程度のものか、と侮っていると、美しさに驚きます。なんせ、女装男子役をやるにあたり、筋肉を落とし、骨盤矯正も行ったといいます。そのため、女装を脱いだあとのパンツ姿も、引き締まった体、透き通るような肌が、どこか中性的で美しい。コロコロ変わる表情も、女性として降参したくなるかわいさです。

コメディーだけでなく、少女漫画が原作のラブストーリー「溺れるナイフ」(2016年)でも、カリスマ的な魅力を放つ少年を体現。減量して役に挑んだという菅田の、繊細で儚げ、それでいて強烈なオーラが漂う佇まいや、小松菜奈演じるヒロインとのラブシーンが「美しすぎる!」と絶賛されましたが、本当に神秘的で見とれてしまいます。 ラブシーンやキスシーンの美しさ、セクシーさも、菅田将暉の魅力の一つとして、多くの女性ファンを夢中にさせています。本作でも、ヒロインの顔をなめたり、顔に唾をはいたりと、なかなか奇抜な愛情表現をとってるんですけど、妙にエロいんですよね。

かと思えば、就職活動を題材にした「何者」(2016年)のように、普通の人物を演じても絶品。 菅田が演じるのは、人なつっこく天真爛漫なキャラクターで、何も考えていないようで着実に内定に近づく世渡りのうまさは、就活仲間をあせらせます。そんな菅田をはじめ、佐藤健、有村架純、二階堂ふみ、岡田将生、山田孝之といった若手実力派の掛け合いは見事で、密かにけん制し合い、自分自身を模索している就活生たちの姿は、見ていてつらくなるほどリアルです。 ちなみに、菅田が演じる光太郎はバンドのボーカルでもあり、歌声を披露するライブシーンがまたしびれます!

海月姫
海月姫
© 2014『海月姫』製作委員会 ©東村アキコ/講談社
何者
何者
© 2016映画「何者」製作委員会

まとめ

10月に二部作連続公開された「あゝ、荒野」では、増量、食事制限など本格的に体を鍛えてボクサー役に挑み、その熱演が話題を集めた菅田将暉。2018年は、少女漫画が原作で土屋太鳳とW主演の映画「となりの怪物くん」の公開も決まっています。「自分にとって最後の制服姿となると思う」とコメントしているので、それは見なきゃだめです!

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