2018.03.27火曜日

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コラムcolumn

3年半ぶりにドラマで見られる! 日本を代表する俳優・妻夫木聡は、ダークな芝居で新たなステージへ

「ダウンサイズ」
「ダウンサイズ」
2018年3月2日(金)全国ロードショー 配給:東和ピクチャーズ
©2018 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

妻夫木聡が3年半ぶりに連続ドラマに出演する「連続ドラマW イノセント・デイズ」(WOWOW)が3月18日から放送スタート。映画やドラマを中心に、第一線で活躍を続けてきた俳優・妻夫木聡の持つ魅力、しっかり最新版にアップデートできていますか?

妻夫木聡の主演・企画、「ランチの女王」以来の連ドラ共演も話題!

幼なじみの田中幸乃(竹内結子)が死刑判決を受ける姿を、法廷で見つめる男、佐々木慎一(妻夫木聡)。死刑執行が迫る中、無実を信じる慎一は、彼女の人生を知る人々に会いに行きます。そして知る彼女の壮絶な半生、たどり着く意外な真実とは…。

発行部数40万部を超える、早見和真のヒューマン・サスペンス小説を映像化した「連続ドラマW イノセント・デイズ」。

自分にとって幸せとは? 正義とは?WOWOWならではの重厚感あふれる演出で描かれるこのドラマは、そんな簡単に答えの出ない問いを、投げかけてきます。

映画にドラマにと活躍しながらも、連続ドラマへの出演は3年半ぶりとなる妻夫木聡。実はこの作品、原作を読んで映像化を強く望んだ妻夫木が、自らドラマ化を企画。2014年の主演映画「ぼくたちの家族」の原作者でもある早見には、妻夫木自ら電話で交渉し、監督には、映画「愚行録」(2017年)でタッグを組んだ石川慶を熱望するなど、妻夫木の熱い思いによって実現した作品、というわけです。

また、女性確定死刑囚・田中幸乃を演じるのが、連続ドラマとしては妻夫木と「ランチの女王」(フジテレビ・2002年)以来の共演となる竹内結子というのも、ドラマフリークにはたまらないキャスティング。

ちなみに、気になる3年半前の連ドラというのが、妻夫木聡、瑛太、満島ひかり、柄本佑、野村周平という豪華キャストが5人兄弟を演じた「若者たち2014」(フジテレビ・2014年)です。

親代わりに育ててきた弟・妹の幸せを一番に考える、昔かたぎで頑固者の長男・旭を演じた妻夫木。まくし立てるように説教をしたり、プロレス技を本気でかけたり、弟・妹たちにはうっとうしがられながらも、ここぞという時には頼りになる熱血漢を、ユーモアたっぷりに好演しているので、この機会にぜひ。

「悪人」を転機に、イケメン俳優から演技派俳優・妻夫木聡に

妻夫木聡と聞いて、頭に浮かぶイメージとは?

初主演映画「ウォーターボーイズ」(2001年)、青春恋愛ドラマの傑作「オレンジデイズ」(2004年)、NHK大河ドラマ「天地人」(2009年)…。

世代的に、妻夫木くん(個人的にはくん付けがしっくり)の作品と共に青春時代があった筆者としては、いまだにまぶしいくらいキラッキラな存在であり続けます。 プールサイドで踊る海パン姿の妻夫木くんを鮮明に思い出せますし、「オレンジデイズ」はどれだけ次週を待ちわびたことか。

イケメン俳優の代表格として、ある種アイドル的な存在でもあった妻夫木聡ですが、38歳となった現在、幅広い役柄をこなせる稀有な俳優の一人になっています。

大きな転機と言える作品といえば、映画「悪人」(2010年)でしょう。 衝動的に殺人を犯してしまった解体作業員の祐一(妻夫木聡)と、彼を愛してしまった女性・光代(深津絵里)の逃避行を軸に、人間の善悪に切り込んだ衝撃作。

深津絵里のモントリオール世界映画祭最優秀女優賞受賞と共に、これまでの爽やかな好青年というイメージをぶち破った妻夫木聡の役柄も話題を集めました。

金髪というビジュアル面もそうですが、常に暗闇を見つめているようによどんだ目、感情を表さない乾いた表情には、“妻夫木聡”を感じさせる要素は皆無。 自ら祐一役を申し出たというだけに、祐一として存在する気迫が伝わってきます。 そして、光代との出会いによって、乾いた体に血が通い始めたかのように、感情がじわじわとあふれていく祐一の姿に、ぐいぐい引き込まれてしまいます。

妻夫木聡のダークサイドが、人間の根源的な問いを突き付ける

「悪人」に続き、吉田修一原作×李相日監督のタッグによる映画「怒り」(2016年)。ここで見せた、これまでにない艶のある芝居にも驚かされました。

一年前に起きた夫婦惨殺事件の公開捜査番組の放送をきっかけに、東京・千葉・沖縄で素性不明の男と出会った人々の間に不信感が芽生え始める、という重厚サスペンス。

人を信じることの難しさ、切なさを残酷なまでに突きつける本作、筆者は初鑑賞後、さまざまな感情を持ち帰りすぎて、体が重くなったと感じるほどでした。

3つの舞台のうち、同性愛者である優馬(妻夫木聡)と直人(綾野剛)の関係を描くのが東京パート。ゲイパーティーや発展場での、男性をかわす仕草や視線の絡ませ方など、優馬を演じる妻夫木の、ねっとりとした色気がスゴイ。

そして、発展場で出会い、一緒に暮らし始める直人との関係性にリアリティを持たせるため、実際妻夫木と綾野がしばらく一緒に生活した、というのは公開当時大きな話題を集めました。そのかいあって、2人の絡みはナチュラルで、何より、優馬が直人を見つめる目の愛おしさが、これまでのどのラブストーリーよりもリアル!

ここ数年、こうした影や憂いを感じさせる役柄で、存在感を放っている妻夫木聡。

小栗旬主演のスリラー作品「ミュージアム」(2016年)の“カエル男”に衝撃を受けた人も多いのでは?妻夫木聡が演じたカエル男とは、カエルのマスクをかぶり、自身をアーティストと称して残虐な殺人を繰り返す謎の男。マスクを脱いだあとのスキンヘッド姿も衝撃ですが、ゲームを楽しむように沢村刑事(小栗旬)を追い詰める姿に、背筋がゾゾゾッ。妻夫木くん、なんて呼べないくらい気味が悪い…(=最高)。

そんな表に出す狂気もあれば、内に潜む狂気もあります。

ということで最後は、筆者が2017年、劇場を出た後に「とんでもない映画見ちゃったな」(いい意味です)と思った作品No.1である「愚行録」について。前述したように、「連続ドラマW イノセント・デイズ」の石川慶監督がメガホンを執り、妻夫木聡と満島ひかりが兄妹役を演じたサスペンスです。

一年前の一家惨殺事件の真相を追うため、関係者に改めて取材を行う週刊誌記者・田中(妻夫木聡)。物語が進むにつれ、出て来る人間たちの“愚行”が次々と明かされ、見ている方はもやもや。その一方で、熱を感じさせないひんやりとした空気感が画面には漂い続け、何とも不気味。

なによりこの映画、つかみが抜群なんです。他人からの叱責によって、田中がバスでお年寄りに席を譲るという冒頭のシークエンスが、これから描かれていく人間の愚かさや醜さを暗に表現。気持ちがいいほどに、心臓をがっちりとつかまれますよ。話の聞き手であるため、キャラクター性が表に出てこない田中について、最もその性質を表現しているシーンでもあるので、絶対見逃しちゃダメです。

「悪人」では誰もが持つ善と悪、「怒り」では人を信じることの難しさ、「愚行録」では人の愚かさや弱さ…。人間の持つ根源的な闇に切り込んだ作品に、すっと溶け込んでみせる妻夫木の芝居は、見る者にさまざまな問いを抱かせ、考えさせる力を持っています。

デビューから約20年、もはや外見がどうこうのレベルを超え、俳優・妻夫木聡は新たな領域に突入しています!

まとめ

影のある役柄をピックアップしましたが、「奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール」(2017年)や、5月25日公開の「妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢ」など、コメディでの存在感もさすが。青春時代を共に歩んできた(と勝手に思っている)身としては、妻夫木くんの芝居に心を動かされることが心地よくも誇らしい。10年後、20年後、30年後…日本の映画・ドラマを引っ張ってくれると確信できる、頼もしい存在です。

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