2018.03.28水曜日

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コラムcolumn

世界的なヒットメーカー、スティーヴン・スピルバーグ監督。歴史上の物語を通して伝え続ける、メッセージとは?

「ダウンサイズ」
「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」
3月30日(金)全国ロードショー TOHOシネマズ 日比谷にて3月29日(木)特別先行上映 配給:東宝東和
©Twentieth Century Fox Film Corporation and Storyteller Distribution Co., LLC.

スティーヴン・スピルバーグ監督のもと、メリル・ストリープ×トム・ハンクスという2大オスカー俳優が初共演を果たした映画「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」(3月30日公開)。今なおヒット作を生み出し続ける世界的なフィルムメーカー、S・スピルバーグが、歴史を動かした劇的な場面にスポットを当てています!

歴代大統領がひた隠しにしてきた機密文書を巡る、政府とメディアの戦い

ベトナム戦争が泥沼化し、アメリカ国内に反戦の気運が高まっていた1971年。国防総省(ペンタゴン)がベトナム戦争について調査・分析した最高機密文書『ペンタゴン・ペーパーズ』の内容の一部を、ニューヨーク・タイムズがスクープします。

ライバル紙に先を越され、ワシントン・ポストの女性発行人キャサリン・グラハムと編集主幹ベン・ブラッドリーは、独自の記事を出そうと奔走し、文書を入手。しかし、記事を差し止めようとする政府からの圧力や法的な脅威にさらされ、社の将来を危険にさらしてまで文書を公表すべきなのか…?グラハムは、報道の自由、信念をかけた決断を迫られます。

歴史的な出来事を、映画界の巨匠スティーヴン・スピルバーグ監督が映画化した「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」。ペンタゴン・ペーパーズを巡る国家とメディアの戦いは緊迫感にあふれ、真実を国民に知らせるべきだというジャーリストの使命に駆り立てられる記者たちの姿に、心が熱くなります。

そして重要なのが、危機に直面するなかで絆を強めて行く、グラハムとブラッドリーの関係性。この2人のキャスティング、超豪華です。

全国規模の主要報道機関を率いた初の女性であり、ワシントン・ポストの伝説的な発行人グラハムを演じているのが、メリル・ストリープ。真実のために戦おうとする編集主幹ブラッドリーを演じているのが、スピルバーグ監督とは本作が5回目のタッグとなるトム・ハンクス。 ハリウッドを代表する名優2人が顔をそろえると、画力、迫力がとてつもない!

また本作は、普通の主婦から有力新聞社の経営者へと変貌していく女性の物語としても重要。男性中心の社会の中で立ち上がり、歴史に残る重大な決断と向き合うグラハムの姿に、女性ならずとも背中を押してもらえるはずです。

歴史の中にあるストーリーから、スピルバーグ監督が伝えることとは

史上最高の累計興行収入を誇り、作品賞・監督賞合わせてアカデミー賞に3度輝いている稀代のヒットメーカー、スティーヴン・スピルバーグ監督。1968年に短編映画からキャリアをスタートさせ、71歳になる現在も精力的に製作を続けています。実際、「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」のあとまもなく、SF映画「レディ・プレイヤー1」(4月20日公開)が控えているくらいですから。

それだけに、世代によってスピルバーグ監督の代表作は変わりそうですが、やはり「JAWS/ジョーズ」(1975年)や「E.T.」(1982年)、「インディ・ジョーンズ」シリーズ(1981年~2008年)、「ジュラシック・パーク」(1993年)などが有名でしょうか。

上記のようなSF映画や冒険活劇といったエンターテイメント性に富んだ作品を撮る一方で、キャリアを通して、「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」のように歴史的変遷の瞬間を描き続けてきました。そのどれもが、「どうしても作らないといけない」という、スピルバーグ監督の気迫を感じる作品ばかりです。

その代表的な作品が、アカデミー賞作品賞と監督賞を受賞した「シンドラーのリスト」(1993年)。第二次大戦下のドイツで、ナチスの虐殺から多くのユダヤ人を救ったドイツ人実業家オスカー・シンドラー(リーアム・ニーソン)の姿を描いた、言わずと知れた名作。ユダヤ系のスピルバーグ監督にとっては、自分のルーツに向き合った作品と言えます。個人的な話ですが、子供の頃にテレビで初めて見てしまった時、子供ながらに「あ、なんかいけないもの見ちゃった…」と思ったことを今でも記憶しています。 それほど、ホロコーストの描写が生々しく、その恐ろしさをこれでもかと伝えています。

「ミュンヘン」(2005年)もなかなか強烈です。1972年のミュンヘンオリンピック開催中に起きた、パレスチナゲリラによるイスラエル選手団襲撃事件と、イスラエル側の報復作戦を描いた衝撃作です。一人一人と殺されていく様子を、容赦ない残虐描写でひたすら描くことで、報復が報復を呼ぶ悲劇、虚しさを訴えかけてきます。

「リンカーン」(2012年)では、アメリカ第16代大統領エイブラハム・リンカーンの実像に迫っています。描かれるのは、リンカーンの最期に至るまでの4カ月間。奴隷制度を撤廃し、南北戦争を終結させるため、あらゆる策を講じて合衆国憲法修正第13条を議会で通過させようとする男の姿を、重厚なタッチで描いています。長回しのカットによって、観客にもリンカーンの思いをじっくりと聞かせようとする演出が印象的な本作、リンカーンを演じたダニエル・デイ=ルイスの名演も相まって、ぐいぐい引き込まれます。アカデミー賞主演男優賞に輝いたのも納得です。

そしておなじみ、トム・ハンクスが主演を務めた「ブリッジ・オブ・スパイ」(2015年)の舞台は、アメリカとソ連が一触即発の冷戦状態にあった1950~60年代。ソ連のスパイの弁護を引き受けたことをきっかけに、平凡な人生を歩んでいた弁護士ジム・ドノヴァンが、ソ連とのスパイ交換の交渉という、世界平和を左右する重要な任務を任されます。まるでよくできたフィクションのようですが、実話というから驚き。冷戦下で国民の人権への意識が薄れる中、道徳心を失わずに戦い続けるドノヴァンを、トム・ハンクスが、神がかった演技で魅せています。緊迫感のある空気の中、言葉は少ないながらも温かな友情を表現する、トム・ハンクスとスパイを演じたマーク・ライランス(アカデミー賞助演男優賞受賞)の競演も見事です。

周りに責められ、不利益を被ることになろうとも、憲法を守るため自分が正しいと信じる行いをする…。歴史的な出来事を通して、スピルバーグ監督はそういった不屈の精神を持った人たちをこれまで何度も描いてきました。しかも、その出来事が今目の前で起こっているかのように、リアルさとダイナミックさをもって描きます。時には目をそむけたくなるような場面も容赦なく。そうして、過去から未来へ学ぶべきことがあると、観客に訴えかけてくるのです。

まとめ

そのほか、第二次世界大戦時のノルマンディー上陸作戦をモチーフにした「プライベート・ライアン」(1998年)も、リアリズムをとことん追求した映像が、今見ても衝撃的。スピルバーグ監督が生み出してきた色あせない名作たちを、この機会に振り返ってみてはいかがでしょう。「レディ・プレイヤー1」(4月20日公開)をはじめ、新作も続々と待機しているので、大忙しですね!

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