2018.07.04水曜日

このエントリーをはてなブックマークに追加

コラムcolumn

カンヌで21年ぶりの快挙! 是枝監督作品「万引き家族」の安藤サクラは、なぜハリウッド女優を虜にしたのか!?

万引き家族
万引き家族
2018年6月8日(金) TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開 配給:ギャガ
© 2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.

是枝裕和監督作品「万引き家族」が日本映画としては21年ぶりに、第71回カンヌ国際映画祭で最高賞であるパルムドールを受賞! 主演のリリー・フランキーをはじめ役者の演技が絶賛されるなか、特にハリウッド女優を魅了した安藤サクラの魅力に迫ります。

新たな家族の姿を描いた「万引き家族」で、カンヌ国際映画祭パルムドール受賞!

万引き家族
万引き家族
© 2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.

映画「誰も知らない」(2004年)で主演の柳楽優弥が最優秀男優賞を受賞し、「そして父になる」(2013年)で審査員賞を受賞、そして7度目のカンヌ出品にしてついに最高賞に輝いた是枝裕和監督。これまでさまざまな家族の形を描き続けてきた是枝監督が、「万引き家族」でモチーフにしたのは“犯罪でしかつながれなかった家族”。これまでよりも視野を広く持ち、現代社会によって切り裂かれる家族の姿が描かれています。

"家族"を演じているのは、監督が「各世代、今一番撮りたいと思う役者さん」と言う、リリー・フランキー、安藤サクラ、松岡茉優、樹木希林といった演技派俳優陣と、瑞々しい表情を見せる2人の子役、城桧吏(じょう・かいり)と佐々木みゆ。万引きで生計を立てるような生活ながらも、仲良く暮らしていた家族は、ある事件をきっかけに衝撃の展開を迎えていきます。

"真の絆とは?"を問いかけてくる重厚な物語へ観客を引き込んでくれるのは、子役を含め、もはや演技とは思えないほどリアルな“家族”の空気を生み出している役者たち。その中でも、今回のカンヌ国際映画祭で審査委員長を務めた女優ケイト・ブランシェットを魅了したのが、安藤サクラです。

「私も含め今回の審査員を務めた俳優の中で今後泣くシーンがあったら、彼女の真似をしたと思って」と、安藤サクラの泣くシーンをケイト・ブランシェットは絶賛。オスカー女優が認めたその“泣き”は、物語の核心に迫る終盤のシーンなので詳細は控えますが、息を止めて見入ってしまうことでしょう。

また、安藤サクラの演技を共演者として目の当たりにした松岡茉優は、映画の関連イベントの席で「全女優にとって絶望的な存在」という独特な表現で、その素晴らしさを讃えています。

ハリウッド女優が真似をしたくなる、安藤サクラの女優力とは?

これまで多くの作品に出演し、演技派女優としてすでに確固たるキャリアを築いている安藤サクラ。今回の受賞のニュースは、安藤サクラという女優の存在をより広い層に伝えたのではないでしょうか。

愛のむきだし
愛のむきだし【最長版 THE TV-SHOW】
©「愛のむきだし」フィルムパートナーズ

昨年には第一子を出産し、ママになって初めて撮影したのが「万引き家族」でした。10月1日にスタートするNHK連続テレビ小説「まんぷく」では、朝ドラ史上初の“ママさんヒロイン”として話題を呼んでいます。安藤サクラがヒロインの朝ドラだなんて、見ない選択肢はありません。そう断言できるほど、全幅の信頼を置ける女優なんです。

最初に安藤サクラが注目された作品といえば、カルト教団や盗撮などをモチーフにした園子温監督による衝撃作「愛のむきだし」(2009年)でしょう。ドラマ「監獄のお姫さま」(TBS・2017年)でのパロディ演出が話題になり、知った人もいるのでは? 本作で、AAAの西島隆弘、満島ひかりと共に中心人物を演じているのが安藤サクラです。カルト教団の地区リーダーという役どころで、洗脳するため他人の生活に巧妙に入り込んでいくさまがとにかく不気味。強烈なキャラクターを見事に体現し、圧倒的な存在感を放っています。ちなみに安藤サクラと同じシーンはないですが、幼い頃の松岡茉優との共演作でもあります。

百円の恋
百円の恋
© 2014 東映ビデオ

そして個人的に、役者の演技を見て震える、という感覚をおそらく初めて体感させてくれたのが、安藤サクラの代表作と言える「百円の恋」(2014年)です。自堕落な生活を送る32歳の一子が、ボクシングと恋に出会い、どん底の生活から再生していくさまを体当たりで演じ、安藤サクラは日本アカデミー賞最優秀主演女優賞をはじめ、数々の賞に輝きました。

たるみきった体の前半から、トレーニングを重ねて徐々に体が引き締まり、動きもサマになる。そしてついにリングへ向かう時が…という流れが素晴らしく、涙涙です。そして本作で如実に感じるのが、安藤サクラの持つ生々しさ、人間臭さという魅力。温度やにおいまで感じられるのではと思うほどで、その役をしっかりと生きているということを感じられるのです。

ちなみに、安藤サクラの顔は、シーンによってすごく美人に見えたり、素朴な顔に見えたり、神々しさすら放っているように見えたりするのが不思議。顔の造作まで変えられるのか⁉と驚きますが、あの演技力ならそれもできそうと納得してしまいます。

ゆとりですがなにか
ゆとりですがなにか 全10話【日テレオンデマンド】
© NTV

そして何より、安藤サクラといえば自然体でリアルな演技のすごみですよね。それが話題になったのが、連続ドラマのヒロインを務めた「ゆとりですがなにか」(日本テレビ・2016年)。脚本・宮藤官九郎の作品なので、セリフ回しやテンションにクセがありますが、そういう部分をきちんと楽しみつつ、女子の切なさ、悲しさ、憤りなどの感情を示す場面ではグッと引き締める、バランス感覚が絶妙。岡田将生、松坂桃李、柳楽優弥というメイン3人を差し置いて、ついつい目で追ってしまうくらい引力がすごいんです。

リリー・フランキー×安藤サクラ、日本映画界最強の"夫婦"が誕生

そんなモンスター級の演技派女優と「万引き家族」で夫婦を演じたリリー・フランキーも、安定のすごみを見せています。

そして父になる
そして父になる
© 2013「そして父になる」製作委員会

リリー・フランキーが「万引き家族」で演じている治という役は、教養も甲斐性もなく、息子に教えられることといえば万引きだけという、情けない父親。「そして父になる」にも通ずる、情けないけど憎めない父親役は本作でも抜群で、胸がキュッと締め付けられるような苦さ、切なさを感じさせてくれます。

イラストや文筆、写真など、多分野での活躍で知られるリリー・フランキーですが、今や俳優としても日本映画に欠かせない存在。是枝作品への出演が今回で4作目であることも、その証でしょう。どんな役でもすんなりと溶け込み、なおかつしっかりと存在感を示すのが彼のスゴイところ。

例えば、「そして父になる」ではがさつでお調子者だが包容力のある父親を演じる一方、同時期に劇場公開された白石和彌監督作品「凶悪」(2013年)では、金のために嬉々として人を殺す極悪人を演じていました。このふり幅は見事です。同じように、常連である大根仁監督作品の一つ「SCOOP!」(2016年)ではヤク中の情報屋を、ほぼ同時期公開の「聖の青春」(2016年)では主人公を優しく見守る将棋の師匠を演じ、ブルーリボン賞でそれぞれ優秀助演男優賞を受賞しています。

「万引き家族」の安藤サクラのように、「そして父になる」では当時のカンヌの審査委員長だったスティーヴン・スピルバーグ監督が絶賛していたのがリリー・フランキーでした。ハリウッドの名監督、名女優が引き付けられたリリー・フランキーと安藤サクラ。実年齢は20歳以上離れている2人ですが、違和感なく、“夫婦”として存在しているのはさすがです。

まとめ

紹介している以外にも、井浦新と共演した「かぞくのくに」(2012年)、姉である安藤桃子監督作「0.5ミリ」(2014年)など、安藤サクラの魅力が炸裂した作品はまだまだたくさん。でも「万引き家族」は、後に安藤サクラのキャリアをそれ以前・以降と分けて語られるくらい、重要な作品になったと確信できます。秋には長谷川博己との初共演という意味でも楽しみなNHK朝ドラ「まんぷく」も待機しているので、今後の安藤サクラにも注目していきましょう。

最新記事