2018.09.06木曜日

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コラムcolumn

懐メロで記憶を刺激したり、アクションとシンクロも! 映画の中の効果的な音楽は、時にセリフ以上に饒舌!

竹内涼真
「SUNNY 強い気持ち・強い愛」8月31日(金)全国東宝系ロードショー 配給:東宝
© 2018「SUNNY」製作委員会

「モテキ」「バクマン。」の大根仁監督が、篠原涼子、広瀬すずなど豪華キャストで描く映画「SUNNY 強い気持ち・強い愛」が8月31日公開。当時のヒット曲が気持ちをタイムスリップさせてくれる本作のように、音楽がBGMに留まらない活躍をする作品を紹介します。

90年代J-POPや、小室哲哉のサウンドトラックが彩る感動作

日本では2012年に公開された韓国映画「サニー 永遠の仲間たち」を、作品のファンであった大根仁監督が、舞台を日本に移してリメイクした「SUNNY 強い気持ち・強い愛」。オリジナル版の時代背景が韓国で民主化運動が過熱していた1980年代なのに対し、今回のリメイク版では日本が空前のコギャルブームに沸いた1990年代に設定。

そんな1990年代に青春を謳歌していた、女子高生6人の仲良しグループ“サニー”。それから20年以上の時を経て、メンバーの1人である専業主婦の奈美は、末期がんにおかされたかつての親友・芹香と久しぶりに再会。「死ぬ前にもう一度だけ、みんなに会いたい」という芹香の願いをかなえるため、奈美はサニー再集結を目指して動き出します。

現在と1990年代、2つの時代を交差して描かれる本作は、現在パートに篠原涼子、板谷由夏、小池栄子、ともさかりえ、渡辺直美、90年代パートに広瀬すず、池田エライザ、山本舞香、三浦春馬など豪華キャストが大集結。ルーズソックス+ポロのカーディガン+ミニスカートといったファッション、小物によってコギャル化した若手女優たちや、ロン毛の三浦春馬は、新鮮です。

そして同じく90年代の空気感を作り上げているのが、劇中に使用されている90年代のJ-POPヒットソングの数々。その時代を知る者としては、音楽が流れるたびに当時の記憶が鮮やかによみがえり、感情が揺さぶられっぱなしで大変。trf(現・TRF)の「survival dAnce ~no no cry more~」はカラオケで誰もが「イエイイエイウォウウォウ」言っていたなぁと懐かしく、重要な場面を彩る安室奈美恵の「SWEET 19 BLUES」は、あの印象的なイントロが流れるだけでグッときます。選曲から使い方まで、音楽的仕掛けの巧みさは、さすがの大根監督です。

そして90年代の音楽シーンを“TKサウンド”で席巻した小室哲哉がサウンドトラックを担当。引退を表明している小室哲哉にとって“自身最後の映画音楽”として24曲を完全オリジナルで制作し、音楽で映画の世界を彩っているので、音にも耳をすませましょう。

ヒット曲盛りだくさんの大根作品

日本のロック・ポップス、サブカル愛が炸裂した「モテキ」
モテキ 全12話【テレビ東京オンデマンド】
モテキ 全12話【テレビ東京オンデマンド】
©「モテキ」久保ミツロウ/講談社 ©「モテキ」製作委員会

大根仁監督の新しい映像表現、音楽センスが発揮されている作品といえば「モテキ」。久保ミツロウの同名漫画を原作に、深夜ドラマ(2010年・テレビ東京)が人気を集め、翌2011年にドラマ版の1年後を舞台にしたオリジナルストーリーで映画化。さえない主人公・藤本幸世(森山未來)が、突然訪れた恋のチャンスに孤軍奮闘する姿を、数々のJ-ROCK、J-POPの名曲を交錯させながら描いた演出が新しく、楽しい!

例えば、音楽フェスのシーンで、カラオケ映像のような字幕を付けて流れる大江千里の「格好悪いふられ方」。ドラマ版第1話と、映画版でも登場するので、「モテキといえば」で思い出す人も多いのでは。また、恋に浮かれた幸世が、周りの通行人たちと一緒に踊り出す妄想ミュージカルシーンも、ドラマ版第3話と映画版で描かれます。どちらもPerfumeの「Baby cruising Love」にのせて踊りますが、映画版ではPerfume本人が登場。

尚、幸世に関わる女性たちは、ドラマ版が野波麻帆、満島ひかり、松本莉緒、菊地凛子、映画版が長澤まさみ、麻生久美子、真木よう子、仲里依紗と、超豪華キャスト。ドラマ版第6話、満島ひかり演じるいつかが、傷ついた気持ちにけりをつけるように熱唱する神聖かまってちゃんの「ロックンロールは鳴り止まないっ」は心に刺さるので必見・必聴です。

民生尽くしの「奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール」
奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール
奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール
©2017「民生ボーイと狂わせガール」製作委員会

コラムニスト・渋谷直角の同名漫画を、妻夫木聡&水原希子の共演で実写化した「奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール」(2017年)。「モテキ」のテイストを思わせつつ、より大人なラブコメディになっています。

ライフスタイル雑誌の編集部に異動になった編集者・コーロキ(妻夫木聡)が、仕事でファッションブランドのプレス・あかり(水原希子)にひとめぼれしたことが、物語の始まりであり、地獄の始まり。奥田民生のように力まないかっこいい大人になるはずが、キュートでセクシー、まさに“出会う男すべて狂わせるガール”なあかりに翻弄され、コーロキは気づけば身も心もボロボロに…。

劇中では、大根監督が自ら選曲した奥田民生の楽曲15曲を使用。出会ったばかりのあかりに仕事で怒られた帰り道は、むなしい気持ちがあふれる「674」、あかりとの情熱的なラブシーンでは「ハネムーン」など、まさに今コーロキの脳内で鳴っているであろう曲が流れ、コーロキの心情を楽曲で感じることができます。

音楽の使い方がユニークな洋画3作品

音楽をユニークに使っている映画は海外にもいっぱい。大根仁監督が「モテキ」でオマージュを捧げた人気作品をはじめ、3作品を紹介します。

「(500)日のサマー」で恋と音楽あるある
(500)日のサマー
(500)日のサマー
©2009 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.

まずは「モテキ」と少し関係のある、日本では2010年に公開された「(500)日のサマー」から。

のちに「アメイジング・スパイダーマン」シリーズ(2012年、2014年)を手掛けるマーク・ウェブ監督の長編映画初監督作。運命の恋を信じるトム(ジョゼフ・ゴードン=レヴィット)と、愛を信じないサマー(ズーイー・デシャネル)の、出会ってからの500日間を描いたビターな物語です。

トムがサマーに運命を感じるきっかけとなったのが、ザ・スミスの「There Is a Light That Never Goes Out」という曲。乗り合わせたエレベーターの中で、トムのヘッドホンから音漏れしているこの曲を聴き、サマーは「ザ・スミスが好き」と声をかけるのです。そのあと、サマーに気づかせようとザ・スミスの曲「Please, Please, Please, Let Me Get What I Want」をデスクで流してみるけれど、スルーされるトムが残念。

また、サマーに夢中の時は「彼女を思ってこの曲を聴いている」と言っていたパトリック・スウェイジの「She's Like the Wind」。彼女にフラれた後は、「この歌も嫌いだ!」と大声で叫び、乗っていたバスを降ろされるトム……音楽を使った演出がおもしろすぎです。

ちなみに、サマーと初めて結ばれた翌朝、トムは世界中が祝福してくれている!とばかりに、通行人たちと妄想ミュージカルを始めます。そう、大根監督が「モテキ」の中でオマージュを捧げたのがこのシーンです。

音楽×カーチェイスがシンクロする「ベイビー・ドライバー」
ベイビー・ドライバー
ベイビー・ドライバー
©2017 TriStar Pictures, Inc. and MRC II Distribution Company L.P. All Rights Reserved.

2017年に公開された「ベイビー・ドライバー」は革新的。天才的なドライビング・センスを買われ、組織のドライバー(逃がし屋)をしている主人公ベイビー(アンセル・エルゴート)。事故の後遺症による耳鳴りを音楽でかき消すことで、ドライビング・テクはさらに覚醒します。

本作では、幅広い年代、ジャンルから選曲された30曲が使用されていますが、スゴイのは、カーチェイスやガンアクションがそれらの音楽とシンクロしていること。ギアチェンジやワイパーの動き、クラッシュなどが、ビートに合わせて演出されています。

ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョンの「ベルボトムズ」が流れる中、赤のスバルWRXでカーチェイスをこなす冒頭約6分のつかみが最高。と思っていると、ボブ&アールの「ハーレム・シャッフル」にのせて、ベイビーがコーヒーをテイクアウトしに行って帰ってくるまでの長回し1シーン1カットが続き、これがまた最高なんです。

ちなみに、監督のエドガー・ライトは、過去作「ショーン・オブ・ザ・デッド」(2004年)で、主人公たちがジュークボックスから流れるクイーンの「ドント・ストップ・ミー・ナウ」に合わせてゾンビと戦うというシーンを撮っています。「ベイビー・ドライバー」では、そのアイデアが全編通して使われているということですね。

「SING/シング」の動物たちが教えてくれる歌の力
SING/シング
SING/シング
©2016 Universal Studios. All Rights Reserved.

「ミニオンズ」(2015年)や「ペット」(2016年)のスタジオ、イルミネーション・エンターテインメントによるアニメ「SING/シング」(2017年)は、動物だけが暮らす世界が舞台。倒産寸前のオンボロ劇場を立て直すため、支配人でコアラのバスター・ムーンは歌のオーディションを開催するのです。

劇中に登場する楽曲は、ザ・ビートルズの「ゴールデン・スランバー」やレディー・ガガの「バッド・ロマンス」など、往年の名曲からヒットソングまで60曲以上。レッサーパンダの5人組“キューティーズ”が歌う曲として、きゃりーぱみゅぱみゅの「にんじゃりばんばん」「きらきらキラー」「こいこいこい」も登場します。歌い踊る姿がかわいい!

そしてメインで描かれるのは、内気で極度のあがり症なゾウのミーナや、家事と25匹の子育てに追われるブタのロジータ、ギャング団を抜けたいと思っているゴリラのジョニーなど、それぞれに事情を抱えた動物たち。気づけば彼らの思いに共感してしまうので、クライマックスのパフォーマンスでは感動のあまり号泣必至です。

オリジナル版のキャストも、マシュー・マコノヒーやスカーレット・ヨハンソン、リース・ウィザースプーンなど豪華スターぞろいですが、内村光良、MISIA、長澤まさみ、大橋卓弥(スキマスイッチ)など日本語吹き替え版も錚々たるメンバー。特に、普段の内気な声色と、クライマックスのパワフルな歌声のギャップが見事なMISIAは鳥肌モノです!

まとめ

映画「モテキ」の中で、るみ子(麻生久美子)が歌う竹内まりやの「カムフラージュ」の歌詞を見て、幸世が自分の状況と重ね合わせるシーンがあります。音楽って不思議と、知っている曲でも聴く場所、聴くタイミングによって感じ方が変わったりしますよね。新たな魅力に気づかせてくれる音楽映画、これからもどんどん出てきてほしい!

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