2018.09.21金曜日

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コラムcolumn

主演映画で一人二役に挑戦! 難役で存在感を発揮する俳優・東出昌大

「寝ても覚めても」
「寝ても覚めても」 9月1日(土)より、テアトル新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷シネクイントほか全国公開 配給:ビターズ・エンド、エレファントハウス
©2018 映画「寝ても覚めても」製作委員会/ COMME DES CINÉMAS

4~6月に放送されていたドラマ「コンフィデンスマンJP」(フジテレビ)で、信用詐欺師“ボクちゃん”役が「かわいい」と評判だった俳優・東出昌大。一転して、9月1日公開の主演映画「寝ても覚めても」では、一人二役に挑み、大人な男の魅力でドキドキさせてくれます!

同じ顔の二人の男と一人の女が織りなす、大人の恋愛映画

「寝ても覚めても」
©2018 映画「寝ても覚めても」製作委員会/ COMME DES CINÉMAS

芥川賞作家・柴崎友香の恋愛小説を実写化した、映画「寝ても覚めても」。気鋭の監督・濱口竜介の商業デビュー作でありながら、第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に選出される快挙を成し遂げ、公開前から話題を呼んでいた作品です。

仕事先で出会い、次第に惹かれ合っていく亮平(東出昌大)と朝子(唐田えりか)。しかし亮平は、朝子が大阪に住んでいた2年前、運命的な恋に落ちるも、突然姿を消した恋人・麦(ばく、東出昌大)にそっくりでした。そのことを朝子は亮平に言えないまま、2人は仲を深めていきますが…。

本作は、同じ顔をした二人の男と、その間で揺れ動く一人の女の、8年間の物語を描く大人のラブストーリー。恋の甘さ、切なさ、苦しさ、恐ろしさを、丁寧かつスリリングに描きながらも、シリアスなだけでなく感情に素直な登場人物たちの言動がたびたび笑いを誘い、コチラを飽きさせずにぐいぐいと引き込んでくれます。

「寝ても覚めても」
©2018 映画「寝ても覚めても」製作委員会/ COMME DES CINÉMAS

ミステリアスな自由人の麦と、実直なサラリーマンの亮平、顔は同じだが全く異なるキャラクターを一人二役で演じているのが、東出昌大。姿形は同じなのに、麦として登場した時はつかみどころのない不思議なたたずまいにゾワッとさせられ、亮平として出てきた時は、包容力のある優しい空気感にほっとさせられます。

189cmという高身長に美しく整った顔立ち、それでいて温厚さや優しさがあふれる雰囲気。彼がもともと持っている複雑でミステリアスな存在感が役にピッタリというのもありますが、これまで幅広い役柄を演じてきた東出だからこそ、二役を見事に体現し、作品に説得力を与えています。

得体の知れない役が妙にハマる! 新時代の怪優・東出昌大

今年は、11月1日に公開を控える「ビブリア古書堂の事件手帖」を含め、6本の出演映画が公開。11月からは、2度目の舞台「豊饒の海」も始まるなど大忙しな、俳優・東出昌大。

これまで、ブレイクのきっかけとなった連続テレビ小説「ごちそうさん」(NHK・2013年)や、少女漫画が原作の映画「アオハライド」(2014年)といった、いわゆる王道のイケメン枠でもきらめいていましたが、彼ならではの強みは、狂気的な役柄へのハマリっぷりにあります。

あなたのことはそれほど
あなたのことはそれほど 全10話【TBSオンデマンド】
© TBS
寄生獣
寄生獣
©2014映画「寄生獣」製作委員会

最近で言うと、人気漫画家・いくえみ綾原作のドラマ「あなたのことはそれほど」(TBS・2017年)での演技が視聴者をざわつかせました。東出が演じているのは、妻の美都(波瑠)に浮気をされた夫・涼太。愛する妻に浮気をされた夫は、どんな行動に出るか? 涼太の場合は、妻のスマホを盗み見して(見開いた目や光の当たり方が怖い)、浮気を知りながらも妻への永遠の愛を笑顔で宣言(それを「プレゼント」と表現するところもヤバイ)。しまいには、嫉妬に狂い奇声をあげながら部屋中にボトルのワインをぶちまけます(「涼太が壊れた」とSNSが沸き立った名シーン)。回を追うごとに激しくなる狂気ぶりはドラマを大いに盛り上げ、1992年のドラマ「ずっとあなたが好きだった」(TBS)で、佐野史郎が怪演したマザコン男“冬彦さん”が引き合いに出されるほど。

そんな「あなそれ」からさかのぼること3年、映画「寄生獣」(2014年)ですでに、狂気的な演技で世間を驚かせています。人間に寄生して体を乗っ取り捕食する、謎の寄生生物が出現した物語世界の中で、東出が演じたのは高校生のパラサイト・島田秀雄。人間社会に溶け込むため、常に張り付けたような笑顔を浮かべていますが、目が笑っていなくてかなり気味が悪い(いい意味です)。最後は暴走して人間たちに襲い掛かりますが、東出の顔面がパカーッと開く映像は衝撃的です。

出演時間が短いにも関わらず、強烈なインパクトを残すのが、映画「散歩する侵略者」(2017年)。地球を侵略しにやって来た“侵略者”たちが、人間の体を乗っ取り、人間たちから家族や仕事、自分などの“概念”を奪っていく、という世界。侵略者に乗っ取られた真治(松田龍平)が、“愛”を知るために入った教会で、東出演じる牧師が登場します。真治と向き合い、愛とは何かをあらゆる言葉で説く姿が、人間なのに侵略者以上に不気味。うっすらと笑みを浮かべていますが、口から出る言葉とは裏腹に、その表情は愛というか感情すら感じさせず、最高のうさんくささが表れています。

ちなみに、「散歩する侵略者」と世界観を同じにするスピンオフドラマ「予兆 散歩する侵略者」(WOWOW・2017年、同年劇場公開)では、概念を奪う侵略者役に。「散歩する侵略者」よりもダークな空気感の中で、彼が醸し出す得体のしれない恐怖をじっくり堪能できます。

気味の悪さや違和感を抱かせる演技は見ていて楽しくなるほど抜群で、「寝ても覚めても」の麦にもこの系統の不気味さを感じた時には、「待ってました!」という気持ちになりました。

繊細な心情を体現する東出昌大の表情が絶品

アオハライド
アオハライド
©2014映画「アオハライド」製作委員会 ©咲坂伊緒/集英社
聖の青春
聖の青春
© 2016「聖の青春」製作委員会

「寄生獣」や「散歩する侵略者」では不自然な表情が役柄とマッチしていましたが、リアルな人間の心情に沿った表情の演技も東出昌大の大きな魅力。

例えば、東出が俳優デビュー作にしてメインキャラクターの一人に抜擢され、日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞した青春映画の傑作「桐島、部活やめるってよ」。演じる宏樹は、スクールカーストの上位にいながらも、親友の桐島が部活を辞めたことから起きる出来事の中、カラッポな自分に気づいてしまう…という役どころ。クライマックスで、神木隆之介演じる映画部の前田と屋上で向き合い、見せる表情はハッとさせられます。

前項でも触れた「アオハライド」(2014年)では、少女漫画の実写化らしく、きちんとキュンとさせてくれます。東出演じる洸は、心に傷を抱えるクールなキャラクター。憂いのある表情や、ヒロイン・双葉(本田翼)への気持ちをおさえようとする表情は、原作好きの筆者もときめきました。ちなみに、本作の同時期に公開していたのが前述した「寄生獣」なので、見比べてふり幅を楽しむのもオススメです。

そして、神がかっているのが、松山ケンイチが29歳の若さで亡くなった実在の棋士・村山聖、東出が聖のライバルである羽生善治を演じた「聖の青春」(2016年)。松山、東出ともに、そっくりなビジュアルにまず目が行きますが、この二人の作り出す空気感は目が離せなくなります。2人が唯一まともに会話をする食堂でのシーンも味わい深いですが、言葉を交わさずとも圧巻なのが最後の対局シーン。実際の棋譜を覚え、約3時間長回しで撮影したというだけあって、緊迫感や熱量がヒリヒリと伝わってきます。そして、ラストで感情がこみ上げてしまう東出の表情に、グッときます(そのあとの松ケンの表情も最高!)。

「寝ても覚めても」でも、物語が重要な局面を見せるシーンで、いまだに頭から離れない亮平の表情があります。一瞬でこちらの気持ちをつかんでしまう、繊細な表情にも注目してみてください。

まとめ

かっこいい、かわいい、気味が悪い、そして紹介しきれませんでしたが、「クローズEXPLODE」(2014年)のような男くさい役など、あらゆる役柄に溶け込める唯一無二の俳優・東出昌大。彼の演技は、作品を見れば見るほどはまるので、たくさんの東出昌大に触れてみてください。「寝ても覚めても」は個人的に、今年のベストワン映画になりそうな予感がしています。

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