2018.09.21金曜日

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コラムcolumn

女性にとって美しさとは? 美に翻弄される女性たちがドラマチック!

「累 –かさね-」
「累 –かさね-」2018年9月7日(金)全国東宝系にてロードショー 配給:東宝
©2018映画「累」製作委員会 ©松浦だるま/講談社

土屋太鳳と芳根京子が初共演にしてW主演を務めた映画「累 –かさね-」が9月7日に公開。“美醜”をテーマにした本作にちなんで、女性たちにとって永遠のテーマとも言える“美”にまつわる作品を紹介。女性の強さ、弱さ、愚かさがあふれています!

キスで顔を入れ替える! “美醜”がテーマの衝撃作

醜い容姿に劣等感を抱きながらも天才的な演技力を持つ淵累(ふち・かさね)と、美しい容姿に恵まれながらも舞台女優として花開かずにいる丹沢ニナ。キスをした相手の“顔”を奪い取れる不思議な口紅を使って、2人は顔を入れ替え、演技力と美貌を兼ね備えた女優“丹沢ニナ”を作り上げます。しかし舞台演出家・烏合(うごう)と“丹沢ニナ”が仲を深め始めたことをきっかけに、2人は欲望と嫉妬心が抑えられなくなっていき…。

そんな女の愛憎渦巻く映画「累 –かさね-」は、公開日の9月7日に最終巻(14巻)が発売される、松浦だるまの人気コミックを実写化した作品。主人公である醜い累と美しいニナを、1人2役=2人1役で演じているのが土屋太鳳と芳根京子です。本作で重要な “顔の入れ替え”というファンタジックな設定を、共にNHK連続テレビ小説でヒロインを務めた演技派の2人が、説得力を持って体現しているのが大きな魅力になっています。

特に、ニナの“顔”を演じる土屋太鳳は劇中いくつかの舞台劇を演じるのですが、妖艶なダンスシーンもある終盤の劇中劇『サロメ』での演技はすさまじく、ただただ息を飲んで見入ってしまいます。そして、大きな傷のある累の“顔”を演じる芳根京子は、もともとの愛らしい見た目を忘れるほど、劣等感に覆い尽くされた人間による魂の叫びは震えます。

また、累とニナが共に思いを寄せる烏合に関ジャニ∞の横山裕、娘の累に不思議な口紅を遺した、今は亡き女優・淵透世(ふち・すけよ)に檀れい、累とニナを引き合わす謎の男・羽生田(はぶた)に浅野忠信と、脇を固めるキャスト陣も豪華です。浅野忠信が演じる、飄々とした中に狂気を感じさせる役は見ていてワクワクするほどピッタリ。累、ニナと関わりの深い役柄なので、土屋&芳根との絡みにも注目です。

「累 –かさね-」と重ねて見たい「ブラック・スワン」

映画の公式サイトで、「累 –かさね-」について“日本版「ブラック・スワン」”という表現が使われています。「ブラック・スワン」とは、ナタリー・ポートマンがアカデミー賞主演女優賞を受賞した2010年の映画。バレエの名作「白鳥の湖」をモチーフに、大役に抜擢されたバレリーナがプレッシャーから精神のバランスを崩していく様をサスペンス&ホラータッチで描いています。

美を表現するバレエの世界において、完璧な踊りを追求する主人公・ニナ。しかし、優等生タイプのニナにとって純真な“白鳥”役は完璧でも、邪悪で官能的な“黒鳥”がうまく踊れないという焦りが募ります。

「累 –かさね-」とはもちろんストーリーは異なりますが、美の追求、欲望や劣等感といった人間の心の闇を描いていることなど、物語の根幹となる部分が共通している両作品。また、「累 –かさね-」は“丹沢ニナ”、「ブラック・スワン」は“黒鳥”というそれぞれの役を、ステージの上で成長しながら完成させる点も重なります。「累 –かさね-」とぜひ見比べてみてください。

その「ブラック・スワン」と同じダーレン・アロノフスキー監督の作品で、「レクイエム・フォー・ドリーム」(2000年)という映画があります。ドラッグによって破滅していく男女の姿を、疑似体験させるように強烈な描写で見せつける衝撃作です。その登場人物の一人が、孤独な未亡人。大好きなテレビのクイズ番組から出演依頼を受けたことを喜び、痩せようと、処方されたダイエット・ピルを覚せい剤だと知らずに飲み続けてしまいます。問題を引き起こした原因は彼女の孤独にありますが、痩せるという美への思いが引き金になった、という意味でこちらも合わせて紹介しておきます。

女性が最初に出合う美の亡者は、きっとあの女王?

「美しくなりたい」、女性であれば誰しも抱く願い。外見を磨くことで、自信が持てたり、前向きになれたりと、人生を好転させてくれることも多いでしょう。しかし、他人と比較して必要以上のコンプレックスを感じたり、理想との乖離に絶望することで、思わぬ悲劇を招いてしまうかも……そんな見た目の美しさに執着し、翻弄され、身を滅ぼす女性たちの姿は、これまでさまざまな作品で描かれています。

最近で言えば、ファッションモデル業界を舞台にした映画「ネオン・デーモン」(2016年)や、沢尻エリカが全身整形の美女を演じた映画「ヘルタースケルター」(2012年)、さかのぼりますが有名なところでは「永遠に美しく…」(1992年)など。

スノーホワイト
スノーホワイト
©2012 Universal Studios. All Rights Reserved.
聖の青春
白雪姫と鏡の女王
© 2011 Relativity Media, LLC. All Rights Reserved.
聖の青春
アデライン、100年目の恋
© 2015 LAKESHORE ENTERTAINMENT GROUP LLC, KIMMEL DISTRIBUTION, LLC AND LIONS GATE FILMS INC. All Rights Reserved

よくよく考えてみると、世の女性たちの大半は、幼い頃にとても有名な“美に執着する女性”に出会っているのでは? 「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰?」、そう魔法の鏡に問いかける「白雪姫」の女王=魔女です。自分より美しいと言われた白雪姫を逆恨みして殺そうとするって、けっこう強烈ですよね。そして、明確にジャッジできない問いに、無責任な回答をする鏡もどうなの…なんて、大人になると新たな楽しみ方もできますね。

そんな「白雪姫」、ディズニーのアニメーション作品が有名ですが、ユニークな解釈によって実写化もされています。その一つが、映画「トワイライト」シリーズ(2008年~2012年)で知られるクリステン・スチュワートが白雪姫(スノーホワイト)を演じた「スノーホワイト」(2012年)。本作ではシャーリーズ・セロンが美しい女王を演じていますが、この女王、永遠の若さと美貌のためにスノーホワイトの心臓を奪おうとします。そんな生々しい描写の多いダークな世界観の中で、女王の神々しいまでの美しさが際立っています。対するスノーホワイトは、王子のキスを待つお姫様ではなく、自ら戦士となって戦う強い女性して描かれる点も特徴的です。

ジュリア・ロバーツが女王、リリー・コリンズが白雪姫を演じた映画「白雪姫と鏡の女王」(2012年)は、よりコメディ色が強め。本作は、自身の浪費のせいで困窮した財政状況を打開するため、女王自ら隣国の王子との結婚を計画します。しかし王子の心を奪うのは、若く美しい白雪姫。女王は王子にホレ薬を飲ませようとして妙な失敗をしたり、鏡に映る自分の影にグチったりと、ジュリア・ロバーツのコメディエンヌぶりもあって、憎めないかわいさがあるんです。美しくなるため、いわゆるエステのようなトリートメントを受けるシーンもあるのですが、虫などが登場するなかなか気持ち悪いもので、その努力が涙ぐましく感じるほど。

“白雪姫”つながりで言うと、湊かなえ原作の「白ゆき姫殺人事件」(2014年)という日本映画もあります。物語の発端となる殺人事件の被害者が、“白ゆき石鹸”という商品を販売する会社の美人OL(菜々緒)だったことから、ネット上で呼ばれるようになった名前が“白ゆき姫殺人事件”。しかし被害者は白雪姫どころか、「常に自分が一番美しくないと気が済まない」という、まさに白雪姫の女王のような性格。実際こういう人いるよね、と思う嫌なリアルさがあるので、いつの世も人間は変わらないんだなと痛感します。

そして、最後に紹介しておきたいのが、ドラマ「ゴシップガール」(2007年~2012年)のブレイク・ライブリー主演の映画「アデライン、100年目の恋」(2015年)です。ある交通事故の影響で、29歳の若く美しい姿のまま100年以上も生き続けることになった女性のラブストーリー。望まずして手に入れた永遠の美を喜ぶどころか、恋愛もできず、愛犬を何匹も看取り、娘もどんどん年老いていくわけで、とても孤独。年相応に老いることの素晴らしさを感じさせてくれるので、オススメします。

まとめ

美に執着する女性たちの姿は、人間の愚かさや欲深さにヒヤヒヤしながらも、どこか引き付けられてしまうから不思議です。今回は女性×美でしたが、「レクイエム・フォー・ドリーム」を見ると分かるように、人は満たされない何かがあるとどんなものにも執着してしまう可能性があるもの。作品は作品として楽しみつつ、反面教師にしたいものですね。

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