2018.09.28金曜日

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コラムcolumn

さみしさを感じる秋の夜長は、映画の中のロマンチックで不思議な夜の世界へ

どこか人恋しく、感傷的な気分になりがちな秋の夜長。そんな夜は、家でしっぽり映画鑑賞がオススメですが、せっかくなら“夜”をキーワードにした作品で、長い夜をとことん楽しみましょう。

夜を舞台にした恋愛映画は、不器用でせつなくて不思議

夜の街には、さまざまな恋愛模様があふれています。誰しも忘れられない夜、待ち遠しい夜、大切な一夜の思い出、などなどあるのではないでしょうか。そんな記憶がよみがえるかもしれない、夜を舞台にしたさまざまな形のラブストーリーを3作、紹介します。

現代の東京が舞台の「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」

映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ
© 2017「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」製作委員会

現代詩人・最果(さいはて)タヒの詩集「夜空はいつでも最高密度の青色だ」をもとに、映画「舟を編む」(2013年)で知られる石井裕也監督がストーリーを紡ぎ、映画化した作品。看護師をしながら夜はガールズバーで働く美香(石橋静河)と、建設現場で日雇いとして働く慎二(池松壮亮)、若い男女のボーイ・ミーツ・ガールなラブストーリーです。

と言っても、少々息苦しい空気が漂っているのは、舞台となるのが、東京オリンピックの開催を控える現代の東京だから。美香が劇中「東京には黒がないからね」と言うように、夜でもきらびやかな渋谷や新宿の街並み、高層ビルの夜景などが、“今”を記録するように映されていきます。

とりわけ印象的なのは、偶然の出会いが続いた美香と慎二が、初めて並んで歩く深夜の渋谷。雲間から顔を出した月が驚くほど青く、2人の姿や画面全体を青く暗い光で覆います。月の青さに驚きつつ「それよりなにより誰も何も気にしてないみたいだ。嫌な予感がするよ」(慎二)、「わかる」(美香)と、都会の嫌な空気や漠然とした不安を共感し合う2人。

月がどれだけ青かろうが、自分の周り以外には無関心。東京や都会に住む人ならよくわかる空気感が、リアルに映像やセリフで表現されていて、ヒリヒリとした気持ちになって来ます。その上悲しい出来事も追い打ちをかけてきますが、東京という街で、不安や孤独、生きづらさを抱える2人が、いかに前を向いていってくれるのか…他人事とは思えず見守ってしまいます。

映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ


ビデオ番号:55800
視聴料金:[購入]2700円(税込)・[レンタル]540円(税込)/48時間

夜だけ会える恋人同士がせつない「タイヨウのうた」

タイヨウのうた
© 2006 「タイヨウのうた」フィルムパートナーズ

夜を舞台にしたラブストーリーといえば、YUI(現・FLOWER FLOWERのyui)と塚本高史主演の「タイヨウのうた」(2006年)がまさに。今年「ミッドナイト・サン ~タイヨウのうた~」のタイトルでハリウッドリメイクされたことで、その存在を知った人もいるかもしれません。

YUI演じる薫は、XP(色素性乾皮症)という病のため太陽の光に当たることができず、日が昇る頃に眠り、日が沈む頃に起きる生活。楽しみは、夜な夜な鎌倉駅前でギターの弾き語りをすること。やがて、いつも部屋の窓からひそかに見つめていた孝治(塚本高史)と仲良くなりますが、会えるのは当然夜だけ。そんな事情のため一度は恋をあきらめる薫に、孝治が投げかけるセリフが「夜だけ会おうよ、昼間は寝てさ。太陽が沈んだら会いに行くよ」。なんてロマンチック。

また映画の中には、薫が目を輝かせる、夜でも明るくにぎやかな横浜の街や、暗闇に波の音だけが聞こえる海岸など、印象的な夜のシーンはたくさん登場します。しかし、一番心をつかまれるのはやはり薫の歌。いつもは観客が誰もいないなかさみしく歌っていた薫が、孝治に連れられていった横浜で、初めて大勢の人を前にして、生き生きと歌う姿は泣けてきます。

タイヨウのうた

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ビデオ番号:08239

月や星の下で、悲しみと向き合う「流れ星が消えないうちに」

流れ星が消えないうちに
© 2015映画「流れ星が消えないうちに」製作委員会

観終わったあと、きっと夜空を見上げながら散歩したくなるであろう映画が、「流れ星が消えないうちに」(2015年)。「半分の月がのぼる空」で知られる橋本紡の同名小説を、波瑠主演で映画化した切ないラブストーリーです。

恋人の加地(葉山奨之)を事故で失って以来、玄関でしか眠れなくなってしまった奈緒子(波瑠)と、加地の親友で、奈緒子の現恋人である巧(入江甚儀)。加地という大切な存在を失った2人が、喪失感や罪悪感と対峙し、前を向いていく様子が繊細に綴られていきます。

物語が展開を見せるのは、主に夜。例えば、奈緒子と加地の関係が始まるきっかけとなった、高校時代の文化祭。加地が奈緒子のために作ったプラネタリウムや、2人の思いが重なったフォークダンスのシーンは、甘酸っぱくてロマンチックですが、加地を亡くした奈緒子の回想として描かれると切ない。また、巧にとっては、夜の学校で一緒に文化祭の準備をした時、加地の発した言葉がずっと心に残り続けます。

奈緒子と巧が月夜の散歩に繰り出すシーンも印象的。奈緒子が「夜ってさ、昼と全然風景が違って見えるよね。知らない場所みたい」と言うように、夜はどこか不思議な出来事を引き寄せる気配を感じさせます。そんな夜によって、奈緒子は加地の記憶がよみがえる場所へ思いがけず導かれ、抑えていた感情をせき止められなくなってしまうのです。

ちなみに本作の撮影地は、都心の近くでありながら、多くの自然も残る東京の武蔵野市・三鷹市。夜の住宅街や商店街、川のある景色は、静かですが決して寂しくはなく、作品の世界観とマッチしています。

流れ星が消えないうちに

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ビデオ番号:16915

音楽やダンスの魔法にかかった、夜の名シーン

夜の景色は、そこにいるだけで不思議とロマンチックなムードを演出してくれることも。そんな夜景が生み出した印象的なシーンのある作品をピックアップ。

夜景をバックにしたダンスが恋を予感させる「ラ・ラ・ランド」

ラ・ラ・ランド
© 2017 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

その年の賞レースを席巻し、2017年に日本でも公開され、多くのファンを生んだミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」。夢追い人が集まる街・ロサンゼルスを舞台に、売れないジャズピアニストのセブ(ライアン・ゴズリング)と女優志望のミア(エマ・ストーン)のロマンスが、魅力的な歌やダンスと共に描かれます。

本作の象徴的なシーンといえば、高い丘の上で、美しい夜景をバックにしたセブとミアの初のダンス。お互いに「恋の気配なんてない」と歌い合いながらも、徐々に動きを合わせ、キレのあるダイナミックなダンスへ発展していく長回しのシーンは、とにかく愉快でキュートな恋の予感。動きに合わせて揺れる、ミアの黄色いドレスも素敵です。

ちなみにミアは「夜景にグッとくるのはおしゃれしてない娘。あるいは恋のチャンスにいつもときめいている娘」なんて強がっていますが、実際はどうなんでしょうね。

ラ・ラ・ランド(字幕・吹替)


ビデオ番号:64170(字幕)・64171(吹替)
視聴料金:[購入]2700円(税込)・[レンタル]540円(税込)/72時間

まとめ

恋愛に限らず、さまざまなドラマが生まれる夜。物語の中の夜を楽しんだあとは、せっかく夜が長いことですし、自分自身も素敵な夜の物語を作りに行ってみては。森見登美彦原作、湯浅政明監督による夜の京都が舞台の「夜は短し歩けよ乙女」や、ランタンが夜空に舞い上がるシーンが美しい「塔の上のラプンツェル」など、夜が印象的なアニメ作品もオススメです。

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