2018.11.16金曜日

コラムcolumn

【ひかりTV単独インタビュー】
主演映画「銃」で輝いた“宝石の原石”、俳優・村上虹郎。出演作を振り返る21歳のヤンチャな目線

村上虹郎

芥川賞作家・中村文則のデビュー作を、日本映画界のレジェンド・奥山和由が企画・製作、「百円の恋」の武 正晴監督がメガホンをとり、モノクロ映像によって実写化した映画「銃」(11月17日公開)。そんな最強の布陣のもとで主演を務めた、俳優・村上虹郎に単独インタビューを敢行。「銃」の話はもちろん、過去の出演映画「武曲 MUKOKU」、「ディストラクション・ベイビーズ」、「春なれや」についても、語ってもらいました。

村上虹郎が映画「銃」で見せた“狂気”の裏側

銃
「銃」
2018年11月17日(土)よりテアトル新宿ほか全国ロードショー 配給:KATSU-do 太秦
©吉本興業

拳銃を拾ったある雨の夜を境に、大学生のトオルが銃に執着し徐々に理性を失っていく姿を、彼自身のモノローグを重ねながら描く、映画「銃」。トオルを演じた村上虹郎は、2018年 第31回東京国際映画祭で、宝石の原石(ジェムストーン)のような輝きを放つ若手俳優に贈る「東京ジェムストーン賞」を受賞。この難役とも言える役を、どのように作り上げていったのか聞いてみました。

「(役作りを)提示するのも恥ずかしい話なのですが…、今回は割と脚本通りにまっすぐ演じました、僕なりに。ただ、変わったことと言えば、実際劇中で使ったトオルの家に数日前から住んだことですかね。というのも、今回は本当に僕が出てないシーンがなく、家の中のシーンが多いんです」

一人暮らしをするアパートで、トオルは愛おしそうに銃を磨き、高揚する一方で、隣の部屋から聞こえる声に心をかき乱される…。本作において、部屋でのシーンは重要であり、大きな割合を占めています。

銃
©吉本興業

「だから、彼がちゃんと空間を支配しているというか、そこに暮らしている人なんだよっていう、言葉にできないニュアンスが映らないといけないと思ったので、今回は実際に住んでみるという方法を取りました。ただこの部屋、お風呂がなくて…。毎日3つ隣の駅の銭湯まで行っていました。カフェインとニコチンをリアルに摂取する役でもあるので、浄化しないとやばいな、サウナに行かないと、と思って、あまり好きじゃないサウナにも入っていましたね(笑)」

とにかくタバコをよく吸うトオル。以前、ドラマでタバコを吸っている設定の役はありましたが、20歳になった直後に撮影した本作が、実際にタバコを吸う初めての役だったそう。

「見ていて、タバコが似合ってないなー、だっせーな、と思いますね(笑)。僕、いまでもそうですけど…。20歳になってすぐ吸い始めたのですが、ナチュラル志向の母親(UA)からしたら絶対ありえないので、うちでタバコを見た時は『タバコ!(怒)』ってぶちギレてましたね。とりあえず、いろんな種類を吸ってみたくて、試したなかで一番おいしかったのが“ブラック”(DJARUM BLACK Tea)という銘柄で、映画でもそれを使っているんです。あんまりコンビニに置いてないので、『もっとわかりやすいのじゃなくていいんですか?』って(監督の)武(たけ)さんに聞いたら、『それでいいよ』って。たぶん得体の知れなさみたいなものを出したかったんでしょうね。リリー(・フランキー)さんもご自身が吸ってらっしゃるホープを使っているのですが、喫茶店でリリーさんが僕にホープを差し出すシーンが、皮肉が効いてて超いいんですよ! 『うわ、ホープ! このやろー!』ってなります」(※ここはぜひ映画を見て確認を!)

銃

リリー・フランキー、広瀬アリス、そして“親父”との共演

トオルの心情がモノローグで語られる本作は、トオルが他者に対してどんな意図でどんな行動をしているのか、というのも見どころの一つ。すでに名前のあがったリリー・フランキー演じる刑事が、銃の所持を巡ってトオルを精神的に追い込む場面は、特に緊迫感でヒリヒリ。芝居の中で向き合うリリー・フランキーという俳優の圧はさぞ計り知れないだろうと思いきや、拍子抜けする答えが返ってきました。

銃
©吉本興業

「いやーー、けっこうキテますよね。リリーさんの目、やばいですよね(笑)。リリーさんはかっこいい、でも、刑事気持ち悪いなーって。(トオルが刑事に尋問される)あの喫茶店のシーン、台本で7ページ半あって、リリーさんがほとんどしゃべってるんです。聞いたらリリーさんって黙読でセリフ覚えるらしいんですよ。セリフって音読しないとなじまないので、感覚でできるって半端じゃないことで、すごすぎると思いました。でもやっぱすごいおもしろいし、あれだけマルチな方ですし、底が知れない。ああいう人ってコワイですよね」

また、リリー・フランキーと同じく初共演となるのが広瀬アリス。安易に体の関係を結ぶ女性がいる一方で、トオルが“あえて時間をかけて親しくなること”を計画する、ヒロイン・ヨシカワユウコを演じています。

銃
©吉本興業

「アリスさんの役は(トオルとの)距離感がすごく難しかったんです。現場ではあんまりお話はしませんでした。それこそ、こうやって取材を始めてからアリスさんを知り始めたので、現場で知り得た情報といえば、漫画が好き、くらい。でも、アリスさんってなんとなく明るいイメージかと思っていましたが、いい意味で引きこもり体質だと思うんです。それが日本人的な奥ゆかしさを出してますよね。モノクロに映える濃い顔…というと僕もそうなんだけど(笑)、あれだけきれいな見た目をしてて、すごく日本人的な部分を感じられるのがすごいエロいです。…エロいとか言って怒られちゃうかな(笑)。でも、そういう映画だから仕方ないんです(笑)」

そしてある種サプライズとも言えるのが、デビュー作「2つ目の窓」(2014年)に続いて2度目となる、父・村上淳との共演。見たら絶対に忘れられない共演シーンとなっていて、「衝撃的でしたね」と話を切り出してみると…。

銃
©吉本興業

「でしょう! 楽しかったですよ。1シーンだけどすごく大事なシーンで、“あの役”が『村上淳さんです!』って言われた時は『えーー!!』ってびっくりしましたけど。『(プロデューサーの)奥山さん…やりやがったな』って(笑)。親父とは、どういう風にしたらかっこいいとか、どういうのがダサいよねとか、そういう役者論みたいな話はしますが、普段から演技については話さないので、今回もほとんど話していません。映画の現場で先輩たちを見てきた親父が、映画においてどういう生き方をするのが俳優として面白いんだろう、かっこいいんだろうってことを、僕に背中で見せたかったんだろうなというのは感じました。あえてそういう現場での振る舞い方をすごくしていましたね。親バカなんですよね(笑)」

今の日本映画の中でも異彩を放つ映画「銃」

演じたトオルについては、時間が経ちようやく“他人”と思えるようになったと話す村上。それでも、完全に客観的には見られないと言いつつ、映画については自信を持って「おもしろい」と胸を張ります。

銃

「『インターステラー』(2014年/宇宙が舞台のクリストファー・ノーラン監督作品)とかに比べたら、『銃』ってすごい狭い世界、ミクロな話なんです。どんだけちっちぇーんだって話なんです。ただのお金のない大学生が、銃拾っただけですから。感情とか理性とか、人の内面っていうミクロの世界でどれだけのスペクタクルを作るかっていうことに特化しているのはおもしろいですよね」

また、この作品は人の善と悪、偽善を描いている映画でもある、と続けます。

「偽善って難しくて、頭がよくなってくると、何が人のためになり、何が人を傷つけるかがわかってくる、つまり、善と悪を選べるわけです。この映画の彼(トオル)はまあ、基本的に利己的に生きていますよね、この女性とは今ヤリたい、この女性とは精神的なおもしろさを見つけたいからあえて優しく振舞おうとか。でもそれって別に彼だけじゃなくて、実はみんなやってるはずなんです。モテたい人間は特に。そういう些細なことが(モノローグによって)言語化されて体感できるのは、おもしろいと思います。あと、あえてモノクロの表現を使うことで時代性がわからなくなっているので、若者が持つ無力感や葛藤、足りないっていう思いが、普遍的に詰まってると思うんです」

村上虹郎が振り返る、過去の出演映画3作

デビュー以来、映画、ドラマ、舞台にと活躍し、今回の映画「銃」でその逸材ぶりを改めて証明してみせた、俳優・村上虹郎。「銃」でその魅力に圧倒された後は、きっと他の作品も気になってしまうはず。ということで、VODで配信している出演映画3作をピックアップして紹介します。本人解説付き!

■「武曲 MUKOKU」(2017年): 日本版『スター・ウォーズ』!?

武曲 MUKOKU

芥川賞作家・藤沢周原作、「私の男」(2014年)などの熊切和嘉監督、綾野剛主演による人間ドラマ。ひょんなことから剣の才能を開花させる高校生・融(村上虹郎)と、剣の道を見失った主人公・研吾(綾野剛)が、台風の中でぶつかり合うクライマックスの決闘シーンは一見の価値あり。融がラップを披露するシーンもあります。

武曲 MUKOKU

ビデオ番号:
42990
視聴料金:
[購入]2700円(税込)[レンタル]540円(税込)/48時間

© 2017「武曲 MUKOKU」製作委員会

「(融の師匠・光邑を演じた)柄本明さんがおっしゃっていましたが、『スター・ウォーズ』なんですよ(笑)。柄本さんがマスター・ヨーダで、綾野剛さんがアナキンかなー。そのお父さん、(小林)薫さんがアナキンくらいかもしれない。僕がルーク・スカイウォーカーでもいいですけど。どっちでもいいかな…。すごく純度の高い作品なので、見てほしいですね」(村上虹郎)

■「ディストラクション・ベイビーズ」(2016年): 村上虹郎主演で「続編希望!」

ディストラクション・ベイビーズ

主演の柳楽優弥を筆頭に、菅田将暉、小松菜奈、村上虹郎、池松壮亮、北村匠海という、次世代俳優の夢のような共演が実現したバイオレンス・アクション。暴力に駆り立てられた兄・泰良(柳楽優弥)を、ひたすら探し続ける弟・将太を演じています。

ディストラクション・ベイビーズ

ビデオ番号:
00220
視聴料金:
[購入]2,700円

© 2016「ディストラクション・ベイビーズ」製作委員会

「言語化しにくい作品というか、そもそも主人公が3言くらいしかしゃべらない(笑)。だからか『わからない』という感想も目にしますが、映画が好きだなって思う人たちからすると、これこれ!って思う、ど真ん中なんですよ。言語じゃない。ちなみに、僕の将太って役も台本では2人殺すはずでしたが、直前で変わったんです。たぶん僕が最終的に希望の光にならないと、もう救いがなさすぎて。次は僕を主人公にして、柳楽さんが超悪役で、続編やりたいです」(村上虹郎)

■「春なれや」(2017年):桜が美しいほっこり映画

春なれや

ソメイヨシノは60年咲くことができないという噂の真偽を確かめるべく、老人ホームを抜け出した女性(吉行和子)が主人公の短編映画。村上虹郎が演じた、彼女を桜へと案内する青年の、ぶっきらぼうな優しさが素敵。「わさび」「此の岸のこと」と合わせて劇場公開され、ユーロスペースの2週間レイトショー観客動員数歴代1位を記録。

春なれや

ビデオ番号:
37561
視聴料金:
[レンタル]216円(税込)/48時間

©外山文治/2016

「びっくりです。ユーロスペース、レイトショー動員1位ですからね。ほっこりする映画です。でもこれ、熊本の震災が起こる一週間前に撮影しているんです。震災前の貴重な桜なんです」(村上虹郎)

村上虹郎
村上虹郎(むらかみ・にじろう)
1997年3月17日生まれ、東京都出身。カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品「2つ目の窓」(2014年/河瀨直美監督)で主演を務め、俳優デビュー。出演した7月期ドラマ「この世界の片隅に」(TBS・2018年)も話題を呼んだほか、2019年1月18日公開の「チワワちゃん」にも出演。2019年5月には舞台「ハムレット」の公演が控える。

映画「銃」公式サイト http://thegunmovie.official-movie.com/
映画「銃」公式twitter @GunMovie

まとめ

どの作品を見ても俳優としての魅力があふれ返っていますが、ご本人は「基本的に自分の作品は見たくない」そうです(成長のためにちゃんと見ているそうですが)。「撮影して終わり、が本当はよくて、もっと言うと、オファーをもらって『マジで!? 共演者誰ですか? うお!!』っていう瞬間が楽しいピーク(笑)。そこからはもう、苦行なんです」と笑っていました。これからもどんどん“苦行”を積んでいただき、たくさんの作品で新たな村上虹郎を見せ続けてもらいたいですね。

最新記事