2017.07.24月曜日

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舞台『プレイヤー』で世代をリードする2人のクリエイターが奇跡の邂逅

前川知大(作)×長塚圭史(演出)
Special Interview

この夏、Bunkamuraシアターコクーンで上演される舞台『プレイヤー』で作・前川知大、演出・長塚圭史というとても興味深い組み合わせが実現する。ほぼ同い年で次代の演劇界をけん引するであろう2人に作品のこと、お互いのことについて聞いた。

前川知大×長塚圭史イメージ
(撮影・仲西マティアス)

前川「他人の演出している現場は行く機会がないので興味深い」
長塚「作品に最適なものを探っていったら劇中劇にたどり着いた」

演劇界は出身校やワークショップでのつながりといったさまざまな要素で関係の近い劇団とか濃い人間関係というものがあったりする。そういったことがきっかけで思わぬ客演が実現したり、というのも演劇ファンのひとつの楽しみだ。そういう観点でみると、この2人がタッグを組むと聞いて「ああ、こういう組み合わせがあるんだ!」と思った人も多かっただろう。もともと2人の接点というものは?

前川「作品を見て、楽屋に挨拶にうかがう、というくらいしかありませんでした。それをするまでも随分時間はかかっていますけど。でも長塚さんの作品はずっと見ていました」

具体的にはどのへんの作品から?

前川「僕が劇場に見に行ったのは再演の『イヌの日』からかな。そのころは長塚さんは阿佐ヶ谷スパイダースばかりではなく、プロデュース公演もがんがんやっていた時でした」

長塚「僕がイキウメの作品を見るようになったのは小島聖さんが出演していた『眠りのともだち』という作品から。あれはいつごろですか?」

前川「2008年ですね」

長塚「『イヌの日』の再演は2006年だから、だいたい10年くらい前ですね」

こうやって1つの作品を作ることになった2人だが、長塚は1996年、21歳の時に阿佐ヶ谷スパイダースを旗揚げ。前川は2003年、29歳の時にイキウメを旗揚げとスタートにはずいぶんタイムラグがある。

前川「旗揚げが29歳の時。演劇自体はその2年前くらいから始めていたんですが、それまではあまり演劇活動はしていなかったんです。だから演劇界にあまり友達がいない (笑)」

長塚「そんなことないでしょ(笑)」

前川「いや、本当にあまり付き合いがないんですよ。ハイバイの岩井(秀人)君くらいだと思う。同じ2003年に旗揚げで同い年。なんとなくお互いに作品を見る機会があって、うちの浜田(信也)がハイバイの初期によく出させてもらったこともありました。本当にそれくらい」

2人はその後、特に接点を持つこともなく今回まで?

長塚「僕はイキウメ自体は、最初に見たときはそんなに繰り返し見るようにはならなかったんですが、この5〜6年は7割くらいは見ていると思います。年に2本くらいやっていますよね。公演数が多いので全部には行けていないんですが、年に1回は見ています。好きなので」

今回は、同世代の作家・演出家の顔合わせというのが企画の始まりだったとのことだが…。

長塚「僕の印象だと前川さんの作品でというのが先に決まっていたと思います」

前川「そうだったかもしれないです。作・演出ではなく作だけでという話をいただいて、そして誰と組みたいかという話があって、“では長塚さんにお願いしたいです”という流れでした」

どういう理由で長塚圭史の名を?

前川「ここ最近、いろいろな作家さんの作品の演出をやっていらっしゃるんですが、そういう作品を見ていて面白いと思いました。それで自分の作品を委ねてみたいと思いました」

長塚「前川さんは明らかに作家性の高い演劇人だと思うし、最近の僕はどちらかというと演出をする率が高いから必然的にこうなったという気はします」

前川は2014年に『太陽2068』という作品で蜷川幸雄さんの演出を経験したことがある。あの時とはやはりプレッシャーといったものは全然違う?

前川「そういうところはあります。脚本の準備段階から長塚さんとはディスカッションをしてきましたし、稽古に入ってからも意見交換をしながらやっていますので」

準備期間が1年間あったという。

前川「いろいろなアイデアが出て、いろいろ変わっていきましたよね」

長塚「そうですね。変化していきました」

その中でイキウメで初演した『PLAYER』をやろうということになったのは?

前川「夏だから怖い話をしようということになって(笑)。最初はそれくらいの発想でした」

この作品を劇中劇にという発想は?

前川「これは長塚さんから出てきたアイデア。台本を読んで、これをどう伝えるか。伝え方という部分、演出に直結するアイデアなんかは打ち合わせの中からですね」

話していく中で響きあうものがあった?

長塚「『PLAYER』は作品自体が死者を演じるというか、プレイする、再生するというお話だったので、演劇との直結を感じました。一般人の人たちが巻き込まれていくという要素がこの作品にはあるんですが、その物語性だけで押そうとするとシアターコクーンというサイズになると難しいような気がしたんです。演出家というのはそのための装置を投げかけるのが役割。その装置の規模をどれくらいにするかということなども含めてですね。それで劇中劇というアイデアを出したら、前川さんがすぐに乗ってくれたし興味を示してくれたので、そこからどんどん話が進んでいきました。でも別に劇中劇をどうしてもやりたかったというわけではないんです。プレイヤーという作品に最適なものを探っていくという作業の中で劇中劇にたどりついたということでした」

前川は劇中劇というアイデアを聞いてどう思ったのか。

前川「もともとあるオカルト話みたいなものに、演劇的な手法によって、お客さんが何を見ているのか分からなくなるような、そういう不安感のような怖さがもう一つ乗っかるので、それはすごく面白い構成になるなと思いました。怖い話以上の怖さ、本当に不安にさせるようなものが出るんだろうな、と思って、すぐに乗りましたよね」

死者の言葉が、生きている人間を通して「再生」されるという設定。こう文字にすると、「ん?」と思う人も多いだろう。それくらい演出は大変そうだ。

長塚「みんなに言われます。“これどうやってやるの?”とか“このシーン、どうするの?”って(笑)」

前川「そんなに?(笑)」

初演時もそういう苦労はあった?

前川「それはね…確かにめちゃくちゃ大変でした。でもその時よりはうまく書けているんじゃないかなって思っているんですけど(笑)」

俳優の力量に寄りかかる部分もありそう。それをできそうな出演者が揃った。

長塚「全体的にいいチームが集まったと思います。稽古も面白くやれている。僕自身は一緒にやったことのない人たちばかりなんですが、わざとそういう人たちを集めたところもあります。フェアな感じにしたかったから。前川さんの作品に慣れている仲村トオルさんと安井順平さんも面白いキャスティングです。2人が直接、前川さんとやりとりすることはあるだろうけど、基本的には演出の僕を通すわけだから、まあちょっと奇妙でユニークなバランスが生まれるんじゃないかと」

キャスティングに関しても2人の希望が通ったという感じ?

長塚「キャストに関しては僕のほうが候補をあげて、前川さんに話をするという形で進みました。前川さんは“気の合う人でやっちゃっていいですよ”と言ってくれたんですが、前川さんが面白く脚本を書けるかどうかということが重要だったので、わりと細かく“これでいい?”ということは聞いたりしていました。そうすると“それだとイメージが広がるね”とか言ってくれて、ストーリーの軸自体はどんどんできていった。またそこにはまっていく俳優さんを制作側と僕が提案していった」

仲村と安井の起用は、やはり前川作品を知る人が何人かいたほうがいいという考えから?

長塚「負荷がどちらにもかかっていいんじゃないかと思いました。僕自身の緊張感も高まるし、うまい関係性が取れれば2人からいろいろな話も聞けるし」

緊張感…。

長塚「前川演出のほうが良かったって言われるかもしれないですから(笑)」

劇中劇としての部分以外は新しく書き下ろした。だから新作のようなものだ。

前川「脚本は意外と大変でした。登場人物が14人いるんですが、結構多いなって(笑)。それは単純に書き分けの部分ではあるんですけどね。いつもはあて書きが多いんですが、といっても今回は僕もほとんど出られている作品を見たことのない方もいたので、そこはイメージで書いた部分もありました。あと、もともとのプレイヤーの骨格を持ってきている分、中心人物の桜井と時枝という竜也さんとトオルさんの役どころなんかはそんなに変えられないから、そこはあて書きということではなかった。でもその中でも劇中劇の戯曲の中の役と稽古場の役があるから、稽古場の中での役なんかはちょっと違う感じにしてみようかな、とかそういうことはしましたが、意外と時間がかかったなという気はします。それで不安があったから、稽古場に来てちょいちょい気になるところは直したりもしました」

始まったばかりだが、手ごたえは?

長塚「いろんなことがうまくかみ合ってくれば面白くなると思います。やっぱり劇中劇構造というものは、うまく活用できていけば戯曲だけ読んでいると分からない、でも上演すると一目瞭然といった視点が大量に視覚的要素として入ってくるんですが、それが面白い。それには無限の可能性があるので好みでチョイスしていくしかないんです。どこをピックアップしていけば、この劇自体に厚みを増していったり、不安感を増せるのかというところを考えながらやっています」

長塚の演出を見てどういった印象を?

前川「人の演出している現場って行く機会がないので今回は興味深く見させてもらっています。蜷川さんはご自分が演出しているところを見られたくない人でしたので“来るな”って言われていたんですよ」

長塚「僕も今度見させてもらおうかな(笑)」

前川「(笑)あとはいつもとは違う視点で俳優を見られるというのがいい。そういうことが全体的にあっていつもとは違う神経の張り方でいられるから面白いです」

長塚は最近は三好十郎、井上ひさしといった大きく世代が離れている作家の作品や海外の戯曲を演出する機会が多い。今回のように同世代の作家の作品を手掛けることはほとんどなかった。

長塚「まあ、現実に前川さんはいるし(笑)。数日稽古場に来てなくて、昨日久しぶりに来られたんですが、気に入らなかったらつまんないな、と思いましたよ」

前川「気に入らないって?」

長塚「前川君が“嫌だな”と思ったら、それはつまらないことだな、と思って昨日は少しピリピリしていました」

前川「そうなんだ(笑)」

作家さんが来ると緊張感が違う?

長塚「いえ、立ち稽古をしているところを見てもらうのが初めてだったので。作家さんが稽古場に居ること自体はプラスだと思っています。 “これはなんだろうね?”ということがあったときにすぐに聞けるじゃないですか。立ち止まらないで済む。“じゃあ…ここは聞いてみますか、先生に”って(笑)。僕らが解釈することは必要なんです。全部の答えを僕は知りたいわけではないから。大きく方向性が違っちゃったらそれは指摘があるんだろうけど。この劇自体は新作というふうにとらえれば、その方針が本当に正解なのかということも多分、前川さんは考えながら見てくれているとも思いますし、“あれ?”って思ったところは疑問が深まるようだったら直すことになるだろうし。だから心強いですね。作家も納得した状態で初日を迎えられるのだと僕は認識しているので。“前川君、気に入ってくれるかな?”って思いながらやっていたら疲れるじゃない?(笑)」

前川「(笑)ホントだよね。そこはちょいちょい見に来られるからいいですよね。昨日も実際に立ち稽古しているところを見て、僕も“ああ、なるほど”というところが結構ありました」

今回は作・前川で演出・長塚。この逆パターンも見てみたい気もする。

前川「やったら面白いとは思いますけどね。でも僕は人の本を演出したことがほとんどないんです」

だから見てみたいのだ。

この2人のタッグは2017年の演劇界の大きなトピックス。どんな作品に仕上げてくれるのか、8月4日の初日が待ち遠しい。

(本紙・本吉英人)

シアターコクーン・オンレパートリー2017『プレイヤー』

【日時】8月4日(金)〜27日(日)(開演は火金19時、水土14時/19時、木日14時。※5日(土)は19時のみ、6日(日)は14時/19時、11日(金)は14時開演。月曜休演。開場は開演30分前。当日券は開演1時間前)【会場】Bunkamuraシアターコクーン(渋谷)【料金】全席指定 S席1万500円、A席8500円、コクーンシート5500円【問い合わせ】Bunkamura(TEL:03-3477-3244=10〜19時[HP]http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/)【作】前川知大【演出】長塚圭史【出演】藤原竜也、仲村トオル、成海璃子、シルビア・グラブ、峯村リエ、高橋 努、安井順平、村川絵梨、長井 短、大鶴佐助、本折最強さとし、櫻井章喜、木場勝己、真飛聖

(撮影:細野晋司)

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